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臨床検査値の解釈 その1

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血液検査 >白血球



CBCとは complete blood count(全血算)の略で、たくさんの項目や数字が並んでいるのに圧倒されがちですが、とりあえず4つのポイントをチェックします
1.白血球は増えたり、あるいは減ったりしていないか?
               → 4000−10000の間か?
2.血小板は減っていないか?
               → 15万以上あるか?
3.貧血はないか? 
               → ヘモグロビンが男なら14、女なら12あるか?
4.前回の測定値と変動はないか
               → CBCは個人差があるが同一患者では変動が少なく、大きな変化があれ                  ば病態の変化か検査の誤りを疑わねばなりません。


今回は白血球をテーマに、白血球数の読み方、白血球分画の読み方 の2つに絞って考えてみます。
白血球は「WBC」と表記され、「ワイセ」と呼ばれます。

■白血球数の読み方
白血球数は
生理的変動が大きいですが、健常人では4000〜9000/μLの間にはいることが多いです。しかし、個人差も大きく、無症状の人では3000〜一万の間なら病的とは決め付けられません。特に喫煙者は高めになります。ポイントは、前回値との比較、および、炎症マーカー(赤沈・CRP)との対比です

・白血球増加
感染症(特に急性・細菌性)、炎症(心筋梗塞など組織破壊性病変も含む)が原因の代表です。もっともチフス、ウイルス感染などあまり増加がみられない感染症もあり、
非常に重篤な感染症では逆に減少することもあります(白血球が血中から組織に動員されてしまうため)。その他、悪性腫瘍の一部、ステロイドホルモン投与後、出血後など、さまざまな原因で白血球が増加します。10000/μLが白血球増加の目安にされることが多いが、絶対値にとらわれてはなりませんふだんの白血球数が少な目の人では、平常の倍以上に増加していたら、有意の炎症の存在を疑わなければなりません。

・白血球減少
軽度の減少は肝硬変、膠原病などでよくみられます。 2000/μLを割るような著明な減少は、骨髄障害(抗癌剤、放射線、薬物アレルギー、血液疾患など)が疑われます。特に、薬剤は必ずチェックしなければなりません。これも前回値との比較が重要で、たとえ基準範囲内であってもあきらかな理由なく白血球が前回値より減少していたら、薬剤の副作用も含め、注意深く観察していく必要があります。
がん治療の現場では、よく「ナディア」(nadir:最下点)という言葉が使われます。体の中の血球数が一番少ない数になった状態を意味します。これは抗がん剤の種類によってわかっており、いつごろナディアがくるのか予想がつきます。例えばシスプラチンでは投与後7-14日頃にナディアが来ます
つまり、化学療法が始まって7日から14日までは、白血球、赤血球、血小板が最低数にあるということです。
この時期を医師は待ち構えて、G-CSFの投与基準を満たしたらGを投与します。おもしろいようによく効きます!(G−CSF製剤の使用の仕方については、改めて別の機会にまとめて説明します)


■白血球分画の読み方
好中球・単球・好酸球・好塩基球・リンパ球の5分画として報告されるのが通常です。白血球分画を見るときは、とりあえず好中球と好酸球に注目します。
その他の分画の多少の基準範囲からのズレは意味づけが困難なことも多いとされています。

・好中球
細菌、真菌に対する生体防御の主役を担う細胞であり、白血球の変動は主に好中球球の変動を反映しています。増加・減少の原因も前述の白血球数の場合と同様と考えてよいのです。癌化学療法の際は、好中球減少(顆粒球減少とほぼ同義と考えてよい)と、それに付随する易感染性に注意しなければなりません。易感染症の指標としては比率よりも好中球の絶対数(白血球数x比率/100)が使用されます。好中球数500/μL以下は易感染状態であります。ドセタキセルを処方している若い医師が
「末血を取ったら分画を!ワイセ3000、好中球600なんてことがないように」と、先輩から指導を受けていたのを聞いたことがあります。

・好酸球
アレルギー疾患による上昇が重要です。
好酸球数は喘息のコントロールのよい指標になります。また、好酸球の増多は薬剤アレルギーの発見のきっかけになることがあります。たとえば、掻痒感の訴えがあったとき、皮膚乾燥・胆汁鬱滞などによるのか、治療薬に対するアレルギーが原因なのかは重大な問題ですが、ある薬を開始してから好酸球が増えてきたなら薬物過敏症を疑わねばなりません。

■白血球減少・好中球減少のGrading・・・CTCAE Ver.3より

白血球
Leukocytes (total WBC)      
LLN:(施設)基準値下限

 Grade 1  <LLN−3000 /mm3
 Grade 2  <3000−2000 /mm3
 Grade 3  <2000−1000 /mm3
 Grade 4  <1000 /mm3
 Grade 5  死亡

好中球/顆粒球(ANC/AGC)
Neutrophils/granulocytes(ANC/AGC)

 Grade 1  <LLN−1500 /mm3
 Grade 2  <1500−1000 /mm3
 Grade 3  <1000−500 /mm3
 Grade 4  <500 /mm3
 Grade 5  死亡


最後に本にはあまり載ってないが、臨床ではよく使われる知識を紹介します。
網状赤血球(reticulocyte 「レチクロ」)は、赤血球が作られる前の状態の未熟な赤血球です。
網状赤血球を調べることにより、骨髄の状態を調べることができます。化学療法の副作用による白血球数の減少を予測したり、G-CSF製剤を投与して白血球数等の今後の回復を予測するのに使用されます。病棟では「網状赤血球数が上がってきているから、あと数日くらいで白血球数も上がってくると思うよ」みたいに使われます。基準範囲は0.5〜1.5%です。




作成日 2009年3月23日