血液検査 >血小板
「PLT」と略記し、「プレート」と呼びます。
健常人の血小板数は15万ー40万くらいです。通常、問題になるのは減少です。
■血小板減少時の症状
・内出血(皮下出血)
・口のなかの出血(歯磨きによる)
・鼻血(鼻かみによる粘膜の出血)
・黒い便や血便、血尿
・皮膚の点状出血、斑状出血
■血小板輸血のタイミング
血小板輸血のタイミングですが、好中球減少に対するG-CSF製剤の投与のように、血小板がいくつになったら輸血を行うべきか、という明確な基準が確立されていないことに注意してください。
(1)ASCOからは2000年にガイドラインが出されています。それによると1万 /mm3が血小板輸血の目安とされています。しかし、一部のがん種では化学療法や放射線療法が著効して壊死を起こした場合に、壊死した部位から出血しやすくなるため2万 /mm3を目安にすることがあるようです。
(2)日本では1994年に厚生省から「血小板製剤の使用基準」が出されています。疾病毎に注意点が書かれていますのでネットで検索して見ることをオススメします。
・血小板数が5万/μL以上・・・血小板減少による重篤な出血を認めることはなく,したがって血小板輸血が必要となることはない。
・血小板数が2〜5万/μL・・・時に出血傾向を認めることがあり,止血困難な場合には血小板輸血が必要となる。
・血小板数が1〜2万/μLでは,時に重篤な出血をみることがあり,血小板輸血が必要となる場合がある。
・血小板数が1万/μL未満ではしばしば重篤な出血をみることがあるため,血小板輸血を必要とする。
しかし,慢性に経過している血小板減少症(再生不良性貧血など)で,他に出血傾向を来す合併症がなく,血小板数が安定している場合には,血小板数が5千〜1万/μLであっても,血小板輸血なしで重篤な出血を来すことはまれなことから,血小板輸血は極力避けるべきである 。
なお,出血傾向の原因は,単に血小板数の減少のみではないことから,必要に応じて凝固・線溶系の検査などを行う。
などと書かれています。
■血小板数減少
肝硬変・・・日常、最もよく遭遇する血小板減少の原因
各種の骨髄障害(薬剤、放射線等)
DIC(血小板数の前回値からの減少が早期発見のポイント)
ITP(特発性血小板減少性紫斑病)
上記が血小板減少の主な原因ですが、その他、ウイルス感染後の一過性の軽度の減少もよくみられるらしいです。
血小板の寿命は約7日であることから、抗がん剤による血小板減少は、一般的に投与後約1週間で始まり、2-3週間後にナディアとなります。好中球減少に比較して一般的には低頻度で軽度のことが多いです。血小板減少がDLTとなっている抗がん剤は、CBDCA、GEM、MMCがあります。CDDP、CPA、VDSも比較的血小板減少をきたしやすいとして知られています。
血小板数を増やす薬剤の開発が試みられていますが、成功に至っていません。現時点では血小板輸血が唯一の対処方法です。血小板輸血には副作用等が伴います。発熱やアレルギー反応には、アセトアミノフェンの投与やステロイドの前投薬が行われています。アセトアミノフェンはNSAIDと違って血小板凝集抑制作用がほとんどありませんから都合がいいです。未知の感染症のリスクもあります。また、血小板製剤には少量の赤血球や白血球が含まれ、頻回の輸血で免疫学的機序による不能状態が出現することもあります。
■血小板減少のGrading・・・CTCAE Ver.3より
血小板
Platelets LLN:(施設)基準値下限
Grade 1 |
<LLN−75,000 /mm3 |
Grade 2 |
<75,000−50,000 /mm3 |
Grade 3 |
<50,000−25,000 /mm3 |
Grade 4 |
<25,000 /mm3 |
Grade 5 |
死亡 |
■血小板増加
炎症で一過性に増加することはよくあります。特殊な血液疾患以外ではあまり問題になりません。
■Q. なぜ肝硬変では血小板が減るのか?
僕は就職して5年以上知らなかったので、忘れることができませんテーマです。
二つのメカニズムが主因と考えられています。
脾腫
肝硬変で門脈圧が上昇して脾腫が生じると脾臓内に大量の血小板がトラップされます。
肝臓のトロンボポイエチン産生低下
血小板産生は肝臓から分泌されるトロンボポイエチンで促進されます。肝臓実質が肝硬変のために減少するとトロンボポイエチンレベルも低下して血小板減少がおこってきます。(慢性腎不全でエリスロポイエチン低下による貧血がおきてくるのと同様です。)
血小板数は慢性肝障害の重症度のよい指標となります。慢性肝炎で血小板が10万/μLをわると肝硬変への移行を疑わねばなりません。なお、アルコール性肝硬変では非アルコール性に比べて血小板の減少が強い傾向がありますが、断酒で改善します。
■輸血でどの程度の血小板数増加が期待できるのか?
■血小板輸血の止め時
がん化学療法の中止後に,血小板数が輸血のためではなく2万/μL以上に増加した場合には,回復期に入ったものと考えられることから,それ以降の血小板輸血は不要である。
血小板減少による重篤な活動性出血を認める場合(特に網膜,中枢神経系,肺,消化管などの出血)には,原疾患の治療を十分に行うとともに,血小板数を5万/μL以上に維持するように血小板輸血を行う。
(1994年 厚生省「血小板製剤の使用基準」より)
■輸血の際の白血球除去フィルターの使用
平成16年10月25日以降,成分採血由来血小板濃厚液は全て白血球除去製剤となっており,ベッドサイドでの血小板濃厚液用の白血球除去フィルターの使用は不要である。但し,赤血球濃厚液を使用する場合は,赤血球濃厚液用の白血球除去フィルターを使用して輸血するか,白血球除去赤血球濃厚液を使用する。
(1994年 厚生省「血小板製剤の使用基準」より)
作成日 2009年3月23日