@NSAID

・長期に使用することが想定されるため、なるべく副作用の少ないことが期待できるCOX-2阻害剤を選択する傾向がある。

NSAIDは速効性があり患者の自覚症状の改善も実感でき初期治療の第一選択薬である[推奨度A]。しかし、関節破壊の抑制はできないため、あくまで対症療法である。

・薬剤師になって数年間、私は胃腸障害予防のためにPPIのような強い酸分泌抑制薬を処方することは不要であり、防御因子増強剤で十分ではないかと考えていた。しかし消化性潰瘍の予防効果が証明されているのはPPIとサイトテックであった。高用量のH2ブロッカーも有用との報告があるがPPIの有用性が高いことがわかっている。

COX-2阻害剤は3つしかないから覚えてしまおう。>ハイペン、モービック、セレコックス

COX-2インヒビターのトピックス
COX-2インヒビターはNSAIDと同様の作用を有しながら胃腸障害の発現が少ないことから、既存のNSAIDにとって代わり臨床で広く使用されている。腎障害については既存のNSAIDと同等で、従来型の非選択的NSAIDに比べ心筋梗塞の発症率が有意に高くなるという問題点が一度浮上したが、その後の研究でNSAID共通の副作用であることが示された。

ADMARDs

(1)【総論】
・厚生労働省研究班のガイドラインによると、推奨度ADMARDはリマチル、アザルフィジンEN、リウマトレックス、アラバの4つ。

・抗RA作用の強さを強中弱で表現すれば、リマチル「中」、アザルフィジン「中」、リウマトレックス「強」、アラバ「強」である。

・アラバはMTXと同等の有効性があることが証明されていながら、市販後に間質性肺炎の死亡例が出てしまったために使用が敬遠されている。

DMARDの必要なモニタリング事項は、添付文書に明記されているので一度は確認をすること。

DMARDsの確立された分類法はない。大雑把に3つのグループに分けて整理してみよう。

 グループ  薬剤(作用の強さ)  関節破壊抑制効果  効果発現
効果も副作用も比較的軽い
高齢者、関節点数少、CRP低い
リドーラ(弱)
オークル(弱)
ブレディニン(弱)


3〜6ヶ月
3〜6ヶ月
3〜6ヶ月
中間型 リマチル(中)
アザルフィジンEN(中)

シオゾール(中)

報告あり 

1〜3ヶ月
2〜4週間
3ヶ月〜
効果も副作用も強い
若年者、関節点数多、CRP高い
MTX(強)
アラバ(強)

証明済み
証明済み 

24週間

□リウマチは慢性疾患であり、治療も長期に渡ることから患者の薬剤に関する知識は深い。それに対応する薬剤師の知識も相応の力が必要とされる。治療法の選択に際しては薬剤費用に関する考察も必要となる。

□治療の目的は短期的には関節痛を抑えてQOLを改善することにあるが、真のゴールは長期的にみて関節破壊を抑制することである。

□昔はまずNSAIDを使い、病状の進展に応じてDMARDやステロイドを使うという消極的な治療が主であった。しかし、RAの関節破壊は発症後2年以内に急速に進行する。薬剤の選択肢が広がり、炎症や痛みを抑えるだけでなく関節破壊を抑えることの重要性が認識され、早期から関節破壊を抑えるより本質的な薬物療法が行われるようになった。

DMARD同士の併用療法について
DMARDは単剤投与が原則。2種類以上の併用で効果の増強、副作用の減弱が期待されていたが、同時併用療法の臨床試験結果で併用療法が単剤療法に優ったとする報告がほとんどない。
・同時併用療法で明らかに有用性が確認されているはレミケード+MTXである。
・使用中のDMARDの効果が減弱した場合に、他のDMARDを上乗せする追加併用療法がプラクティカルに行われる。同時併用療法に比べ1つのDMARDが効果不十分のときに他のDMARDを追加し併用することで臨床効果を得たとする成績は多い。

(3)ステロイド
・ステロイドは速効性があり短期的には症状を改善させる効果は極めて強いが、長期的にはかえって骨破壊を進行させてしまう。そのためDMARDの効果発現までの間、あるいはDMARDが使用できない症例に期間を決めて投与されることが多い。しかし、副作用の面からRAでの使用に否定的な考えもあったが、関節破壊抑制効果が報告されてから再評価されている。510mgを上限の目安として使う事が多い。
・副作用の一つであるステロイド性骨粗しょう症は用量依存的であり、その予防にはビスホスホネート製剤、V.D、カルシウム製剤が併用される。第一選択はビス剤である。
・投与開始の目安は2004年に発表された「ステロイド性骨粗しょう症の管理と治療のガイドライン」(日本骨代謝学会)を参照。

(4)生物学的製剤
・同種同効薬の比較としてまとめたのでそちらを参照してください。
・今まではT-cell中心であったが、B-cellCD20など新たなサイトカインを標的にした薬剤開発も進んでいる。これから併用療法などのエビデンスが蓄積してくるであろう期待の新薬です。
・最近、イスコチン単剤の処方に対し若い薬剤師が照会をしている処方せんをみました。結核の治療では、耐性菌の発現を防ぐため必ず2剤以上の抗結核薬を併用することは研修生でも広く知っているようですが、「潜在性結核」に対する薬物療法は単剤とされています。結核菌は通常宿主に感染した後、一時的に休眠状態となります。また、結核を発病して治療を実施しても、最終的には病巣内に休眠状態の結核菌が少数残存します。これらの状況を潜在結核感染といいます。日本リウマチが学会の「関節リウマチ(RA)に対するTNF阻害療法施行ガイドライン(改訂版)」によれば「結核感染リスクが高い患者では、TNF阻害薬開始3週間前よりイソニアジド内服(原則として300mg/日、低体重者には5mg/kg/日に調節)を69ヶ月行う」とされている。 対象者がイソニアジド耐性結核菌による感染を受けていることが知られている場合には、代わりにリファンピシンにより4または6ヶ月間行います。

処方時の頭の働かせ方
□リウマトレックス+フォリアミンの併用目的と、服用方法を確認
□抗リウマチ薬(特にステロイド)による胃腸障害に対するPPIが処方
□プレドニンの服用方法の確認
プレドニンは通常、朝昼食後で処方される。生体の分泌リズムに合わせ、下垂体―副腎機能の抑制防止に考慮した用法である。しかし、リウマチの患者の症状に応じた投与方法を考慮することがある。例えば朝のこわばりが強ければ昼より夕食後が適切だろうと思う。
薬剤の副作用予防あるいは治療のために併用される薬剤

代表的薬剤 特徴・位置づけ
(1)NSAIDs ハイペン
モービック
関節痛の抑制を目的に投与
関節破壊の抑制はできない
対症療法的薬剤
(2)DMARDs
免疫調節薬 リマチル
アザルフィジンEN
正常な免疫機能には影響せず、異常な免疫機能に作用して病気の活動性を抑える
免疫抑制薬 リウマトレックス すべての免疫機能を抑えて、病気の活動性を抑える
関節破壊の抑制効果が証明されている
(3)ステロイド剤 プレドニン
(1)の抗炎症・鎮痛作用,(2)の免疫抑制作用,の両方の作用を有する
有効性の高いが,副作用のコントロールが重要
(4)生物学的製剤 レミケード
既存の薬剤が無効な症例に適応をもち、有効性及び副作用が最強。値段も最強で投与を断念する患者も少なくない。
作成日 2008.10.25
□関節リウマチ治療薬

実例処方5の解説

実例処方
実況中継

DMARDsの共通した特徴
有効率は数十%
レスポンダーとノンレスポンダーを予知することはできない
効果発現まで数ヶ月を要する
薬剤ごとに特徴的な様々な副作用(重篤なものを含む)があり、薬剤選択時の指標になる
良好反応を示した患者でも、2,3年で薬剤抵抗性が現れる

(2)【各論】
MTXは週1回の間欠投与(12時間ごとに分2、分3)。効果発現は24週間とDMARDとしては早目(通常4週間以上)。
・国内の承認用量は週1回6〜8mgだが、10mg/週以上で効果を認める例が少なくない。欧米、アジアでも15mgまでが通常量。

□関節破壊抑制効果が証明されているゴールドスタンダード薬。わが国でのMTXの適応は「少なくとも1種類以上の他のDMARDが無効な例」という制約がある。最高用量(8mg/週)の再評価と、早期例への適用についての見当が望まれる。

□リウマトレックス服用後2448時間ごとにフォリアミン5mgを服用する。目的はリウマトレックスの一部の副作用(肝臓、胃腸障害)を軽減させること。必要なければMTXの効果減弱の可能性から予防投与しないこともある。同時服用でも効果減弱はないとする本や、時間を空けても若干減弱すると書かれた本がある。つまり明確な投与方法は確立されていない。当院では2448時間後に投与する処方がほとんど。

主薬 副作用防止(治療)のための薬剤
NSAID 胃薬
ステロイド 胃薬
MTX フォリアミン
イスコチン ピドキサール
抗生剤 ビオフェルミンR
抗うつ薬 下剤
昇圧剤
抗精神病薬 抗コリン剤(アーテン,アキネトン)
ラシックス アルダクトンA
ダイアモックス アスパラK
キロサイド注 フルメトロン点眼液
タキソール注 デカドロン注
ザンタック注
レスタミン錠
レミケード ソルメルコート(ソルメドロール)注
レスタミン錠
レミケード MTX錠
リツキサン アセトアミノフェン散
レスタミン錠
イホマイド注
エンドキサン注 
ウロミテキサン注
モルヒネ 制吐剤
下剤 
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