主な細胞外液補充液の比較
〜ラクテックとソルアセトFを起点に。
ワンポイント2の続きとして読んでください。
細胞外液補充液は等張液であり、生食と同様に、投与後はすべて細胞外液に分布します。
■ラクテック(細胞外液補充液>乳酸リンゲル液)
大量に生食を投与すると高Cl血症や希釈性アシドーシスをきたす恐れがあり、Cl濃度を生理的濃度まで減らして、アルカリ化剤として乳酸を加えています。乳酸は肝臓で代謝されてHCO3-(重炭酸イオン)になるため、アシドーシスが予防できるということです。
注)生食だけでなく、5%Gでも大量・急速に投与すると希釈性アシドーシスが生じる。
■ソルアセトF(ヴィーンF)(細胞外液補充液>酢酸リンゲル液)
肝機能障害がある場合、乳酸が代謝されず乳酸性アシドーシスをきたす恐れがあります。肝臓のみならず筋肉でも代謝される酢酸を用いたのがソルアセトFです。ただ、肝臓の乳酸代謝能は高いとされており、酢酸が乳酸より有利であるという明らかなエビデンスはないようですが、どちらかというとやはりソルアセトFのほうが処方量が多い感じです。
ラクテック、ソルアセトFの違いは、アルカリ化剤に乳酸を使っているか酢酸を使っているかだけの違いです。電解質の組成は同じです。
■ビカーボン注(細胞外液補充液>重炭酸リンゲル液)
重炭酸はCaやMgと混合するとCa塩やMg塩を析出するため、また重炭酸は安定性が悪く分解してしまうため、生理的なアルカリ化剤であるHCO3-を直接配合したリンゲル液は製剤化されていませんでした。2004年8月、重炭酸リンゲル液としてビカーボン注が発売されました。
本剤はクエン酸を配合することによりCaやMgとキレートを形成させHCO3-との反応を防ぎ、また気体を通さない特殊な容器に入れCO2の外への放出を防止し重炭酸の分解を抑えることで、製剤化に成功しました。このようにアルカリ化剤として重炭酸を使用したほかに、ラクテックやソルアセトFに含まれていないMgを配合することで、より細胞外液の組成に近づきました。ビカーボン注は日本で作られた世界で初めての重炭酸リンゲル液で、これが本当に臨床的に有用性があるかどうかは日本が中心となって臨床試験を実施していくべきだと思います。詳しい理由はわからないのですが、今のところ、ソルアセトFほど処方されていません。
こうしてみると、ソルアセトF(あるいはビカーボン?)があれば十分のような気がしますね。
作成日2009.4.12