同種同効薬>β遮断薬の比較

β遮断薬は,(1)β1選択性の有無,(2)ISAの有無,(3)親油性/親水性の3つを軸に分類します。臨床的にどのような違いが生じるのかまで,しっかり押さえながら勉強しましょう。
注)MSA(撒安定化作用)の有無で分類している本もあるが,臨床的な使い分けの基準がはっきりしないことから,省略します。


(1)β1選択性の有無
β1受容体は,主に心臓に分布しています。β1選択性のことを心臓選択性ということもあります。

β1遮断作用

心収縮力低下
心拍数減少
心伝導系抑制
レニン分泌抑制
脂肪分解抑制
房水産生抑制

β2遮断作用

気管支収縮
末梢血管収縮
グルコーゲンを分解抑制(=グルコースが血中へ遊離するのを抑制=低血糖)
インスリン分泌抑制
子宮収縮抑制


(2)ISA(内因性交感神経刺激作用)の有無

ISAあり

睡眠・安静時は弱いβ刺激作用を有し,過度の徐脈・伝導障害・収縮抑制がなく,心機能の低下した患者や,末梢循環障害,中等度の腎障害をもつ患者に用いる。中断症候群も少なく,脂質への影響も少ない。

ISAなし

レニン分泌抑制作用が強い
心筋梗塞後,労作性狭心症に対しては,ISA(−)の薬剤が推奨されている



(3)新油性/親水性
インデラル,アーチストは親油性が高く,テノーミンは親水性,メインテートはその中間、と覚える。

親油性が高い

・中枢性の副作用が現れやすい
   例)うつ,不眠,悪夢
・腸管吸収はよい
・代謝による個人差が現れやすい
肝障害があるときは減量が必要か検討し、時には親水性のものに変更する。

親水性が高い

・肝臓における初回通過効果がないので降圧効果の個人差が少ない
腎障害があるときは減量するか、新油性のものに変更する



■当院で採用しているβ遮断薬の比較
 当院では,約10種類のβ遮断薬を採用していますが,明確な違いがある薬剤ばかりではないです。処方頻度の高いβ遮断薬に成分名を付けました。
薬剤 β1選択性 ISAの有無 親油性/親水性
(油水分配係数)
備考
テノーミン
(アテノロール)
β1選択性あり ISA(−) 親水性
(0.015
-
セロケン
(メトプロロール)
β1選択性あり ISA(−) 中間
(0.98)
-
メインテート
(ビソプロロール)
β1選択性あり ISA(−) 中間
(1.09)
-
ケルロング β1選択性あり ISA(−) - -
セレクトール
(セリプロロール)
β1選択性あり ISA(+) - β2受容体刺激による血管拡張作用を持つ
ハイパジール 非選択性 - - NOドナーで血管拡張
インデラル、-LA
(プロプラノロール)
非選択性 ISA(−) 親油性
(20.2)
【適応外使用】
振戦(本態性、甲状腺機能亢進症)
食道静脈瘤の出血予防
偏頭痛
ミケラン、-LA
(カルテオロール)
非選択性 ISA(+) 親水性
(0.35)
心臓神経症に適応あり
アーチスト
(カルベジロール)
αβ遮断薬 - 親油性
(226)
血管拡張作用、抗酸化作用、糖脂質代謝を悪化させない
アルマール
(アロチノロール)
αβ遮断薬 - 中間
(1.2)
本態性振戦に適応あり
カルバン αβ遮断薬 - - -


作成日2009年8月15日

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