サイアザイド、ループ、K保持性利尿薬の比較
注)本稿では薬効別の比較に話を限定し、ラシックスとルプラックの比較のような薬剤同士の比較は行わない
利尿薬は
利尿作用の強さ
K+保持性か否か
腎機能低下例で使えるか
で使い分けます。
これに、降圧作用の強さを加えて表に整理すると次のようになります。
利尿作用の強さ | K+保持性 | 腎機能高度低下 | 降圧作用 | |
サイアザイド系、 サイアザイド類似薬 |
++ | 低下(弱) | 投与不可 | ++ |
ループ利尿薬 | +++ | 低下(強) | 投与可 | + |
K+保持性利尿薬 | + | 上昇 | 慎重投与 | + |
サイアザイド系、サイアザイド類似薬
□フルイトランが処方されると「オッ!」と感じるほど、ラシックスなどに比べると処方されない。
□昔は高血圧の治療にかなり使われていたらしいが、今は高齢者の軽症高血圧、低レニン性高血圧、食塩感受性高血圧に特に有効と言われている。女性の高血圧に有効性が高いとも言われているらしい。利尿作用の強さは弱いため、浮腫には使用しない。
□利尿作用は、
フルイトラン;1.5時間以内に最高になり、6〜7時間続く
ナトリックス;24時間続く。ほぼ腎臓・内分泌・代謝内科からしか処方されないが、その理由はどの本にも書いていない。メーカーに聞いたところ腎内領域で昔から使用実績があるから、と説明された。
□低K血症はラシックスほど顕著でないので通常は大して気にしないが、ジゴシンが処方されていたら注意。
□尿酸値上昇はループよりはるかに気にならない。しかし、血糖上昇が起こることをはよく知られたことであり、忘れてはならない。すぐには発現しない。
□適応外使用:腎性尿崩症
尿が出る病気「腎性尿崩症」に利尿薬サイアザイドを使用することがある。患者に聞かれたらなぜ利尿薬が処方されているのか答えられますか?
ループ利尿薬
□浮腫性疾患にはループが第一選択薬である。
□利尿作用は
経口投与で30分から1時間で現れ、1〜2時間で最高になり、6時間程度続く
注射では数分で作用が現れ、3時間程度続く
□ラシックスは管腔側から尿細管細胞に作用するため、乏尿のときは作用部位に到達する量が少なくなるので、より大量の投与が必要になる。当院では使用されていないが100mg注が販売されている。
□薬効がシャープなだけに、電解質の変動にも注意が必要。
□ラシックスを静脈内投与し続けた場合に、低Na血症が起こりやすい
□ラシックスはKを排泄し低K血症を発現させるが、これを利用して高K血症の治療薬として利用することがある。また、Caの再吸収を阻害し低Ca血症にもなるが、逆にこの作用を利用し高Ca血症の治療薬に利用されることがある。
□尿酸値の上昇は日常的なこと、らしい。痛風や尿管結石の既往のある患者にはザイロリックを併用する。
K+保持性利尿薬
□K+保持性利尿薬は、利尿作用は弱いが、心不全の予後を改善するエビデンスがある。
□単独では利尿薬としての作用は弱いので、原発性アルドステロン症の診断および症状の改善の場合以外はループと併用することがほとんど。
□アルダクトンAの作用発現時間は投与後3〜8日かかると言われている。これは、細胞核内への作用を抑制し、その結果タンパク合成を抑え作用を発現するから、と言われている。
□K+保持性利尿薬の注射剤は「ソルダクトン注」。成分はカンレノ酸カリウムで、スピロノラクトン(アルダクトンAの成分)の活性代謝物である。
□pH9〜10とかなりアルカリ性を示し血管痛を起こしやすいです。また配合変化に注意が必要で、pHが酸性側へ小さく変化するだけで析出しやすい例である。
□アレビアチン、ビクロックス(ゾビラックス)、ソル・コーテフ、ソル・メドロール、ネオフィリン、ラシックスなども同様の配合変化を起こす。
□逆にpHがアルカリ性側へ小さく変化するだけで析出しやすい薬剤としては、
アタラックスP、イノバン、キシロカイン、セレネース、ドルミカム、ビソルボン、ペルジピン、ワソランなどです。
□ソルダクトン注射液の添付文書には、「本剤の適用対象は、経口抗アルドステロン薬の服用が困難で、高アルドステロン症によると考えられる症状であり、投与に際しては、特に適応、症状を考慮し、他の治療法によって十分に治療効果が期待できない場合にのみ本剤の投与を考慮すること。
」「投与期間は原則として2週間をこえないこと。」などちょっと怖くなるような記載があります。その理由は・・・
添付文書の「使用上の注意 9.その他の注意の項(1)」に記載のあるとおり、ソルダクトンにおいてはラットの24カ月の経口投与(20,50,125及び270mg/kg)による癌原性試験で、肝臓、甲状腺、精巣、乳腺の腫瘍及び骨髄性白血病が、対照群に比し有意に増加したとの報告があります。一方、本剤開発時に行われた亜急性毒性試験(4週間〜1カ月)では、ラット(100mg/kg腹腔内、48mg/kg静注)、マウス(100mg/kg腹腔内)、イヌ(36mg/kg静注)のそれぞれにおいて、白血球数とその分画変化は認められず、また、臓器について腫瘍性変化は認められませんでした。以上の試験結果を踏まえて、漫然と不必要な長期投与を避けていただくために、添付文書「用法・用量」において投与期間を2週間までと限定しています。また、投与期間を「2週間まで」としたことについては、国内における使用成績調査において、多くの症例が2週間以内の投与であり、使用実態とかけ離れたものではないと考えられます。なお、添付文書に記載しておりますとおり、本剤は経口抗アルドステロン薬の服用が可能になった場合及び初期の効果が認められない場合には速やかに投与を中止するべきであると考えます。
(おまけ)
ダイアモックスは眼科では緑内障、麻酔科では睡眠時無呼吸症候群によく処方される。また、ダイアモックス注は尿をアルカリ化するので、MTXの解毒に使われることも”常識”です。
作成日 2009年8月29日
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