緑内障治療に用いる点眼薬>プロスタグランジン関連薬の比較
緑内障治療の第一選択薬であるプロスタグランジン関連薬についてまとめておきましょう。PG関連薬は房水産生を抑制することで眼圧を下げるお薬です。
現在、緑内障治療に用いるプロスタグランジン関連薬は4つ市販され,当院でもすべて採用しています。レスキュラ,キサラタン,トラバタンズ,タプロス点眼液の順で発売されました。
薬剤名 (成分名) |
特徴 |
レスキュラ点眼液 (ウノプロストン) |
レスキュラは発売当初ものすごい勢いで処方されていましたが、後から開発された他のPG関連薬とは作用機序が異なると考えられており、眼圧下降作用が弱いことためか処方が激減してきており,他のPG関連薬にないメリットが見いだせないと、そのうち消えてしまうかもしれません。 |
キサラタン点眼液 (ラタノプロスト) |
キサラタンはレスキュラより強い眼圧下降作用を有し,トラバタンズの発売までかなり頻繁に処方され,一時期ポスト・レスキュラの地位を確立していたと感じます。 |
トラバタンズ点眼液 (トラボプロスト) |
トラバタンズは防腐剤(塩化ベンザルコニウム)フリーが売りで眼に優しいと言われています。しかし添加物としてホウ酸などは入っています。防腐剤アレルギーに最も多い、多くの点眼薬に含まれる塩化ベンザルコニウムが入っていないと正しく理解してください。 |
タプロス点眼液 (タフルプロスト) |
タプロスは正常眼圧緑内障に対する眼圧下降効果が証明されている唯一の薬剤です。 |
私の考えるの緑内障治療薬の使い分けを理解するためのポイントは以下の5点ですが、すべてが明らかになってわけではありません。
・眼圧下降作用の強さ ・病態(正常眼圧緑内障(NTG)か否か)に対するエビデンスの強さ ★視神経障害の進行を阻止をプライマリーエンドポイントとしたエビデンスがあるか →最重要ポイントですが、残念ながら現在発売されている4つのPG関連薬で、視神経障害の進行を阻止が証明された薬剤はないそうです。 ・防腐剤の種類、眼への刺激の強さ ・角膜障害の強さ |
治験では既に眼圧の日内変動を副次的評価項目に設定しているものが実施されています。将来、日内変動と視神経障害の関係が明らかとなれば、日内変動が少ない薬剤が広く使用されるようになるかもしれません。
補足1
【治療目標となる眼圧の設定】
□「緑内障診療ガイドライン第2版(2006年11月 日本緑内障学会)」によれば、無治療眼圧レベル、緑内障病期、患者年齢・余命、他眼の状況、家族歴、その他の危険因子などから目標となる眼圧の設定をします。http://www.nichigan.or.jp/member/guideline/glaucoma2-5.pdf
□ 病期別の設定例としては、初期例19mmHg以下、中期例16mmHg以下、後期例14mmHg以下という数字が提唱されています。
□ 正常眼圧緑内障では無治療眼圧より30%の眼圧下降が目標値として言われており,眼圧下降”率”で設定されています。日常診療では20%低下を目標に設定することが多いとタプロス点眼液の院内勉強会(メーカーが説明)で聞きました。
□目標眼圧を達成することが治療のゴールではなく,視神経障害の進行を阻止することが緑内障治療における真のゴールです。
補足2
【プロスタグランジン関連薬で高頻度で発現する副作用】
・結膜充血 ・まつ毛成長 ・虹彩や眼瞼(まぶた)への色素沈着 ・角膜上皮障害 |
補足3
【虹彩や眼瞼の色素沈着について】
美容上の問題であり,命には関係ありません。
機序:色素細胞におけるメラニン産生量の増加 好発時期:3ヵ月後以降 予後 :虹彩・・・回復しない 眼瞼・・・休薬後数ヶ月で回復する リスク因子:不明 類薬との比較:不明 予防法 :虹彩・・・予防法はない 眼瞼・・・点眼後のふき取り・洗顔 (タプロス点眼液 院内勉強会資料より) |
作成日 2009年9月1日
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