□硝酸薬の薬理作用は
・冠動脈の拡張
・末梢静脈の拡張による前負荷の軽減
・末梢動脈の拡張による後負荷の軽減
・血小板機能の阻害
□使用される主な疾患は、狭心症、心筋梗塞、心不全、高血圧
□硝酸薬には様々な剤型が用意されている。それぞれの薬剤の特性を理解し、使い分ける。発作用と発作予防用の2つに分けて考える。
一般名 | 舌下錠、スプレー薬 | 貼付薬、徐放薬 | 注射薬 |
ニトログリセリン | ニトロペン錠 ミオコールスプレー |
ニトロダームTTS ミリステープ |
ミリスロール注 ミオコール注 |
硝酸イソソルビド | ニトロール錠 | ニトロールR フランドルテープ |
ニトロール注 ニトロールシリンジ |
一硝酸イソソルビド | − | アイトロール錠 | − |
ニトロペン錠 / ニトロール錠
□ニトロペン錠は吸収が早く1〜2分で高い血中濃度が得られますが,作用時間が約30分と短いです。ニトロール(舌下錠)はニトロペンと比較し効果発現に少し時間を要しますが(約5分),効果は60分以上持続する利点があります。
□早く効かせたいときは、錠剤を口の中で噛み砕いて舌の下で溶かすと良い。 □舌下が困難な重症患者や,口腔内が乾燥していて舌下では効果の遅れが懸念される高齢者等にはスプレー薬が有用です。病院内であれば舌下錠・スプレーが無効な場合に注射薬を使用したりすることもあります。
□ニトロール錠の適応は,発作の治療と予防の2つがあります。発作には舌下,予防には内服で投与し,使用目的によって投与方法が違います。
□ニトロールを内服した場合,血中に入り込みターゲットの冠血管に到達するまでかなりの時間を要します。また,消化菅から吸収された薬剤は肝臓での初回通過効果によりの一部が代謝されてしまい,効果が減弱します。時間もかかる,効果も弱まるので発作を抑えることはできません。診察室でも医師・看護師から舌の下に入れて使うことを指導しているはずですが,それでも薬剤師が説明し、患者が理解しているか確認することは大切であると考えます。ニトロペンは発作治療のみの適応しかとっていません。
□ 舌下錠は何錠まで服用してよいか
数のルールはないが、少なくとも2個までは効果を期待できる。
ニトロールRカプセル / アイトロール錠
□ニトロールRは薬剤のリリースを徐放化した製剤で、血中濃度を維持します。それに対しアイトロール錠は体内で長時間安定なため製剤学的に徐放化しているわけではありませんので、粉砕も可能です。
貼付薬
□貼付薬は、皮膚刺激のため長期使用できない患者がいます。□効果が不十分のため増量しようとしたとき、
修正前)1日1回 1枚 →修正後)1日2回 1回2枚
としてしまう研修医がいますので注意してください。貼付薬はcontrolled-releaseタイプの製剤なので,増量するときは1日2回にするのではなく1回2枚にしなければ意味がありません。
□安定期の硝酸薬の慢性投与(経口徐放薬、貼付薬)は、硝酸薬に対する耐性を発現させる可能性があるため、耐性発現の回避のために間歇投与を行うことがしばしばあります。
その他
□PDE5阻害薬(勃起不全,肺高血圧症)と硝酸薬の併用は“禁忌”です!
□硝酸薬は狭心症症状を大幅に軽減できますが,β遮断薬と異なり予後の改善を示したエビデンスはありません。
□労作狭心症ではβ遮断薬、冠攣縮性狭心症ではCa拮抗薬が第一選択ですが、
気管支喘息、慢性閉塞性動脈硬化症、徐脈性不整脈を合併していて使用できないときに、徐放性硝酸薬がβ遮断薬やCa拮抗薬の代替薬になることがあります。
シグマート
□硝酸薬から派生したプラスアルファをもつ不思議な薬剤
□硝酸薬様作用として静脈系の拡張により前負荷を軽減し、Kチャネルオープナーとして動脈系を拡張し後負荷を軽減する。
□冠血管に対しては硝酸薬様作用として冠血管を拡張しスパスム予防・寛解作用を示す。Kチャネルオープナーとして硝酸薬が作用しない細い(100μm以下)冠血管を拡張し、冠血流量の増加作用を示す。
□ニトロールRより、はるかに処方されている。ニトロールR<アイトロール<<シグマート、といった感じ。
□心筋細胞内のミトコンドリアKチャネル開口作用というよくわからない作用により、心筋保護効果をもたらし、急性期・慢性期のいずれの投与においても長期予後改善効果が報告されている。
□Kチャネル開口薬とは何か、突っ込んだ知識を持っている医師は少ないらしい。よくわからなくても使える。
□硝酸薬との違いは“冠血流量の増加に比し、血圧の低下が少ないこと”である。
高血圧→ミリスロール
普通の血圧→ニトロール
ちょっと低め→シグマート
かなり低め→硝酸薬もシグマートもさしあたり控える
という選択の仕方もありうる。
□症状の緩和に著効する患者がいる
□耐性は発現しない
作成日 2009年9月6日
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