今月、レミケード(外来)だけから、レミケード(外来・入院)&アクテムラ(入院のみ)の調製を薬剤部で行うようになりました。来月からはリウマチ内科、消化器内科での服薬指導が開始され、これらの薬剤の適正使用に薬剤師が関与していくことになります。
生物学的製剤は関節リウマチやクローン病・潰瘍性大腸炎(寛解導入・寛解維持)を中心に、今後も続々と新薬が承認されるでしょう。このHPに関節リウマチに使用する生物学的製剤の比較を掲載してから既に約2年が経過したので、ここで一度改訂をおこないます。

商品名 レミケード エンブレル ヒュミラ アクテムラ
成分名 インフリキシマブ エタネルセプト アダリムマブ トシリズマブ
ターゲットとなる
サイトカイン
TNFα TNFα/LTα TNFα IL-6
製剤 キメラ型(ヒト/マウス) ヒト型
レセプター製剤・・・
受容体をまねた製剤で,この薬を自分の受容体と勘違いして標的分子が結びつくことで、その働きが抑えられる
ヒト型 ヒト型
関節リウマチ以外の効能・効果 既存治療で効果不十分な下記疾患
ベーチェット病による難治性網膜ぶどう膜炎、尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症、強直性脊椎炎

次のいずれかの状態を示す
クローン病の治療及び維持療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)
中等度から重度の活動期にある患者、外瘻を有する患者
多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎(既存治療で効果不十分な場合に限る) 既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、関節症性乾癬 既存治療で効果不十分な下記疾患
多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎、全身型若年性特発性関節炎

キャッスルマン病に伴う諸症状及び検査所見の改善。ただし、リンパ節の摘除が適応とならない患者に限る。
用法 0,2,6週に投与。
以降8週間に1回
1週間に2回 2週間に1回 4週間に1回
手技 静注(2時間) 皮下 皮下 静注(1時間)
MTX併用 必須
(6〜8mg/週)
必須ではない 必須ではない 必須ではない
国内発売年月日 2003年7月 2005年3月 2008年6月 2008年6月(関節リウマチ)

□開発動向
・アレルギーのリスクの低いヒト型へのシフト。しかし,ヒト型でも抗体の出現が確認されており100%安全というわけではない。
・投与方法が簡便な報告へ。エンブレルは自己注が可能。
□その他
・レミケードの前投薬 処方例
ソル コーテフ注(ヒドロコルチゾン)100MG/V 200MG
生理食塩液 50ML/本             50ML
点滴静注(DIV)10分かけて 
・抗TNF薬は投与翌朝に効果を実感する患者もいる。アクテムラは効果発現までに1ー2ヶ月を要する場合がある。
・関節内で炎症を起こしている原因はTNFαである。TNFαのみならずTNFβ(=LTα)も阻害してしまうと、B細胞を介した抗体産生に影響するため、感染症のリスクが高まると言われている。臨床的に明確な差として現れているわけではないが、エンブレルとレミケードを比較した市販後の全例登録調査では、エンブレルのほうが重篤な感染症や死亡のリスクが高かったと報告されている。
・5ヶ月以上間を空けてレミケードを再開すると,強いアレルギー反応が起こりやすい,という報告がある。


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スクリーニングやモニタリングに必須となる項目について要点を整理します。
項 目 要   点
悪性腫瘍 ・医薬品・医療機器等の安全性情報NO.270 2010年6月 参照
結核 ・アクテムラ以外の3薬剤は添付文書「警告」に、アクテムラは「重要な基本的注意」に次の記述がある。>>『十分な問診、胸部X線検査及びツベルクリン反応検査を行い、適宜胸部CT検査等を行うことにより、結核感染の有無を確認すること』
・過去にBCG予防接種を受けた患者はツ反がとなってしまうので、クオンティフェロンテストを考慮する
・潜在性結核にはイソニアジトの予防投与を行う。結核の治療では、耐性菌の発現を防ぐため必ず2剤以上の抗結核薬を併用するが、「潜在性結核」に対する薬物療法はイスコチン単剤である。
日本リウマチが学会の「関節リウマチ(RA)に対するTNF阻害療法施行ガイドライン(改訂版)」によれば「結核感染リスクが高い患者では、TNF阻害薬開始3週間前よりイソニアジド内服(原則として300mg/日、低体重者には5mg/kg/日に調節)を69ヶ月行う」とされている。対象者がイソニアジド耐性結核菌による感染を受けていることが知られている場合には、代わりにリファンピシンにより4または6ヶ月間行う。副作用等のために生物学的製剤の投与を中止しても、イソニアジドは決められた期間(6-9ヶ月)のみ続ける
・「一般診断用精製ツベルクリン(PPD)1人用」は副腎皮質ホルモン剤が原則禁忌となっている。理由はステロイドの免疫抑制作用でツ反が妨害され、陽性であっても陰性となってしまう(偽陰性)恐れがあるからである。しかし生物学的製剤を必要とする患者は既にステロイドが投与されているだろうし、偽陰性の恐れがあることを認識して併用すれば問題ないのではないかと思います。結核感染の有無は、ツ反のような免疫検査だけでなく、胸部X線やCT等の画像検査などを組み合わせて総合的に判断にしていくのですから。
間質性肺炎 KL-6を測定する
・4剤すべて 慎重投与の項目に「間質性肺炎の既往歴のある患者」が、重大な副作用の項目に「間質性肺炎」が記載されている
関節リウマチ患者は、そもそも間質性肺炎を合併する場合がある。日本人は欧米人と比較して、その発症リスクが高いことが知られている。また、生物学的製剤以外の抗リウマチ薬にも間質性肺炎の副作用が報告されている。
・4薬剤すべての添付文書「重大な副作用jに次の記述がある。>>異常が認められた場合には、速やかに胸部X線、CT及び血液ガス検査等を実施し、本剤の投与を中止するとともに
ニューモシスチス肺炎との鑑別診断βーD-グルカンの測定等)を考慮に入れ適切な処置を行うこと』
深在性真菌症 βーD-グルカンを測定する
肝炎 ・治験ではすべてHBs抗原とHVC抗体を測定する。日常診療でもこの2つだけは検査していると思います。
・ワンポイント31「免疫抑制・化学療法により発症するB型肝炎対策」参照
心不全 ・アクテムラ以外の薬剤はすべて、うっ血性心不全の患者に投与することが禁忌となっている。【症状を悪化させる恐れがあるため】
・治験では、約半数が 
「NYHA分類(V度以上)」が除外基準に設定されている。
ワクチン ・インフルエンザHAワクチンは不活化ワクチンであり、併用可能である。
・治験では6週間-3ヶ月以内に生ワクチン、弱毒化ワクチンを使用した患者は除外基準でひかっかる。6週間ー3ヶ月と各実施計画書により異なることから、明確な基準はないようである。
その他 ・HTLV-1抗体の検査を必須とする治験が一つだけあった。
・HBVのPCRまで必須としている治験はない。


(参考)ニューモシスチス肺炎の診断(ヒュミラ情報ネットより)http://dra.e-humira.jp/safety/nyumo_03.html




作成日 2008年10月
改訂日 2010年8月5日

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