制吐剤の使い方
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悪心・嘔吐は急性と遅発性に分け、
抗がん剤の催吐作用の強さに応じて、
投与する制吐剤の種類とコンビネーションを考える。 |
急性の悪心・嘔吐
催吐作用の強さ |
制吐剤 |
高度リスク |
イメンド
+5HT3拮抗薬
+デカドロン |
中等度リスク |
5HT3拮抗薬
+デカドロン
※パラプラチン、トポテシンなどの特定の抗癌剤を使用する場合についてはイメンドの追加併用を推奨 |
軽度リスク |
デカドロン単独投与
※状況に応じてノバミンもしくはプリンペランも使用 |
遅発性の悪心・嘔吐
催吐作用の強さ |
制吐剤 |
高度リスク |
イメンド
+デカドロン |
中等度リスク |
デカドロン単独投与
症例に応じてイメンドとデカドロンの併用、
もしくは 5HT3拮抗薬、イメンドを単独で使用する |
軽度リスク |
制吐薬は推奨されない |
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制吐療法に関する国際的ガイドラインとしては、MASCC(Multinational Association of Supportive Care
in Cancer)、NCCN(National Comprehensive Cancer Network)、ASCO(American Society
of Clinical Oncology)などがあります。
2010年にはわが国初となる「制吐薬適正使用ガイドライン」(日本癌治療学会編)が公開されました。
抗癌剤投与24時間以内の
急性期には主にセロトニンが5HT3受容体に
急性期から24時間以降の
遅発期には主にサブスタンスPがNK1受容体に結合し、
悪心・嘔吐が引き起こされることを、しっかり理解しましょう。
制吐療法の原則は“予防”であり、症状発現後の治療ではないことは常識です。
■デキサメタゾンについて
デカドロン錠(0.5mg)
抗悪性腫瘍剤(シスプラチンなど)投与に伴う消化器症状(悪心・嘔吐)の場合、通常、成人にはデキサメタゾンとして1日4〜20mg(本剤8 〜 40 錠)を1 〜 2 回に分割経口投与する。ただし、1日最大20mg までとする。 |
デカドロン注(3.3mg/)
投与法
(注射部位) |
投与量・投与回数
(デキサメタゾンとして) |
(参考)
(本剤の1回量:
デキサメタゾン3.3mg/mLとして) |
静脈内注射
点滴静脈内注射 |
通常、成人には1日3.3〜16.5mgを、1日1回又は2回に分割して投与する (最大16.5mgまで)。 |
1〜5mL |
制吐効果について、これらを超える高用量の優越性は示されていません。
■5HT3受容体拮抗薬
急性嘔吐の予防の中心的薬剤として使用されています。
アロキシ静注(パロノセトロン)は、本邦で行われた臨床試験で、デキサメタゾン併用下での第V相ランダム化比較試験で、
カイトリル(グラニセトロン)に対する急性悪心・嘔吐における“非劣勢”と、遅発性悪心・嘔吐における”優越性”が示されました。
■イメンドカプセル(アプレピタント)
CYP3A4に対する阻害作用があります。
DEXはイメンドの併用によりAUCが2倍に上昇するため、使用する時は
DEXを50%減量することが推奨されています。
■ピットフォール
劇症化が懸念されるB型肝炎や糖尿病などの基礎疾患を有する症例に対するステロイド併用の可否について
→従来から制吐剤としてのステロイド投与が敬遠されることで、遅発性嘔吐のコントロールに苦慮する場合がありました。これについては
イメンドとカイトリルの2剤併用が、これらにDEXを加えた3剤併用に比べて、完全嘔吐抑制率と完全悪心抑制率において劣らないとするデータも示されています。イメンドの登場は、このような基礎疾患を有する患者にも有用であると思われます。
作成日2011年8月5日