片頭痛治療薬の使い分け

2002年には日本神経学会から「慢性頭痛治療ガイドライン」、
2005年には厚生労働省研究班により「慢性頭痛診療ガイドライン」が出されている。

【片頭痛に使われる薬剤】
トリプタン系薬
Ca拮抗薬
NSAIDs
アセトアミノフェン
エルゴタミン製剤
その他;制吐剤

片頭痛の薬物療法は@急性期治療と、A予防療法に分けられる。

@急性期治療・・・トリプタン系、NSAIDs、アセトアミノフェン、エルゴタミン製剤

POINT
・軽度〜中等度の頭痛 
       ⇒NSAIDを用い、
         過去にNSAIDが効かなかった場合などにトリプタン系薬を用いる
・中等度〜重度 ⇒トリプタン系薬

<< トリプタン系薬のPOINT >>
・5-HT1B受容体および5-HT1D受容体に作用して、頭痛発作時に過度に拡張した頭蓋内外の血管を収縮させ、片頭痛を改善する
・片頭痛急性期治療薬の中心的薬剤
・重症例にも高い効果が得られる
・発作が生じたらできる限り早く投与する
・前兆期に服用しても効果はない(カフェルゴットと勘違いしない!)
・有効性は、約70%
・患者によって効果が一定ではないので、一つのトリプタン系薬が無効な場合、ほかのトリプタン系薬に切り替えるのもよい。(ただし24時間以上空けて服用)
・高価だが(1約1000円>自己負担額300円)欧米各国においてトリプタンが医療費支出に見合うだけの効果を持っているかどうか、いわゆる費用対効果の評価が行われました。その結果は社会全体に対して経口トリプタン薬により便益が還元されると結論されています。

<< NSAID、アセトアミノフェン の POINT >>
・NSAIDは安全性も高く、安価で、軽度〜中等度の場合の第一選択薬となる
・発作が起きたら、できるだけ早く服用するほうがよい
・妊婦、授乳婦において、発作が重度で治療が必要な場合には、アセトアミノフェンが勧められる
・NSAIDの市販薬の使用は乱用につながる可能性があり、慢性連日性頭痛に結びつくことに留意する必要がある

■トリプタン系薬の 服用のタイミング
トリプタン製剤の服用のタイミングは、結構つかむのが難しい
早めに飲みすぎても、ひどくなってから飲んでも効かない。
効かない上に副作用だけ出てしまうなんてことも
残念ながら、この説明をせず医療機関からトリプタン製剤を処方されていることが少なからずあるようです。
表のように痛くなり始めが服用のタイミング。
ところが、人によって前兆のない人、急に激痛になってしまう人などいるのでタイミングをつかむのは、難しいです。
自分のタイミングを見つけることがポイント!です


■トリプタン系薬の 剤形&最大量 ほか

トリプタン系の各種薬剤間では特に優劣はない。剤形の違いをもとに、トリプタン系薬の選択を行う

商品名
(一般名)
剤形/規格 追加間隔 追加最大量 1回最大量 1日最大量 T-max 半減期
イミグラン
(スマトリプタン)
錠/50mg 2時間以上 100mg 100mg 200mg 1.8時間 2.2時間
#点鼻液/20mg 2時間以上 20mg 20mg 40mg 1.3時間 1.9時間
#キット皮下注/3mg 1時間以上 3mg 3mg 6mg 0.2時間 1.7時間
注/3mg/1mL/A 
(皮下注投与

静注はリスクあり〔血管収縮作用のため〕
1時間以上 3mg 3mg 6mg 0.2時間 1.7時間
ゾーミッ
(ゾルミトリプタン)
錠/2.5mg 2時間以上 5mg 5mg 10mg 3.0時間 2.3時間
RM錠/2.5mg 2時間以上 5mg 5mg 10mg 3.0時間 2.9時間
レルパックス
(エレトリプタン)
錠/20mg 2時間以上 40mg 40mg 40mg 1.0時間 3.2時間
マクサルトRPD
(リザトリプタン)
錠/10mg 2時間以上 10mg 10mg 10mg 1.3時間 1.7時間
#アマージ
(ナラトリプタン)
錠/2.5mg 4時間以上 2.5mg 2.5mg 5mg 2.5時間 5.0時間

トリプタン製剤の剤形別の使い分け

(補足)発作時間の長い月経関連片頭痛などでは、トリプタン系薬剤の作用時間が足りずに片頭痛が再発してしまい、追加投与を余儀なくされる症例もあった。ナラトリプタンは、ほかのトリプタン系薬剤よりも半減期が長い(約5時間)点が最大の特徴である。国内の臨床試験では、24時間にわたる頭痛改善効果が認められたことが報告されている。

■片頭痛治療薬と併用される制吐剤
制吐剤により、片頭痛の随伴症状である悪心・嘔吐を軽減できる
副作用も少なく、積極的な使用が勧められる.
よく処方されるのはプリンペラン。(ナウゼリンでも良い)

片頭痛時には悪心・嘔吐のために胃内容停滞が起こり、経口薬の吸収を遅延する。
プリンペランやナウゼリンは抗ドパミン作用をもち、
@制吐作用のほか、
A消化管運動を亢進させ、トリプタン系薬の吸収を速やかにし、頭痛を抑える作用を速やかに発現させる、
まさに一石二鳥である。

■片頭痛治療薬と併用されるミオナール(成分:エペリゾン)
ミオナールは筋弛緩薬で筋緊張性頭痛に効果があります。片頭痛の患者に対しミオナールが処方されるのはなぜでしょうか?次の2つが考えられます。
@片頭痛と筋緊張性頭痛を合併するいわゆる混合型頭痛の可能性があります。
A「頭が痛くなる前に、そう言えば肩がこってくる」「片頭痛と肩こりがワンセットになっている気がする」こういう人は多いのではないでしょうか。実は、片頭痛と肩こりは深くつながりがあります。肩こりをコントロールすることで片頭痛の発症も抑えることを期待しているのだと思われます。

■エルゴタミン製剤
片頭痛に用いるエルゴタミン製剤には、ジヒデルゴットクリアミン配合錠Aがあります。ただし、他の片頭痛治療薬に比べ処方頻度は100分の1くらいで、ほとんど使われていません。

<< エルゴタミン製剤のPOINT >>
・発作の早期に服用したときの効果はNSAIDと同等か劣っており、副作用として悪心・嘔吐があるため、使用は限られる。
・中等度〜重度の痛みには効果が少ない。
・トリプタン系薬で頭痛の再燃が多く見られる例には使用価値がある。
・妊娠中、授乳中の使用は禁忌である(子宮収縮作用、血管収縮作用があり早産の危険性があるため)
・クリアミンAは片頭痛のほか、血管性頭痛と緊張性頭痛に対する適応があります。1週間に10錠まで




A予防療法
エビデンスの質でいうと、複数のRCTにより一致した結果が得られている薬剤は3つ。
  ⇒デパケン(バルプロ酸)、トリプタノール(アミトリプチリン)、インデラル(プロプラノロール)
このうち、やっと最近保険適応を取得したのがデパケン(他は適応外)。
以前から適応を持つテラナス(ロメリジン)は、RCTによるエビデンスはあるが上記3剤に比べるとエビデンスは不十分。ただ、臨床ではそこそこ処方されている。
現場で使われているのはデパケン、トリプタノール、テラナスの3つが95%以上。



作成日 2011.9.26

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