経口血糖降下薬


経口血糖降下薬はたった6種類。ザックリと6種類の違いを、いくつかの基準で分けて整理してみます。
DPP-4阻害薬のポジショニングに関しては情報が少ないため、説明も少なくなっています。





インスリンを分泌させる SU薬
グリニド薬
インスリン抵抗性を改善させる ビグアナイド薬
チアゾリジン薬
ブドウ糖吸収遅延 α−GI薬
SU薬とグリニド薬はインスリンを分泌させる同系統の薬剤であるので、原則的には併用しない
インスリン抵抗性改善作用のあるビグアナイド薬とチアゾリジン薬は、併用がありうる。TDZ誘導体のピオグリタゾンの主な作用機序は,末梢組織での糖利用の促進である。BGの主な作用機序は肝糖産生の抑制である。標的分子は,TDZ誘導体では脂肪細胞のPPARγ,BGでは肝臓のAMPキナーゼと推定され,理論上併用療法は有効と考えられる。


薬効分類 ビグアナイド チアゾリジン
作用機序 肝臓での糖新生の抑制 PPAR-γの活性化による脂肪細胞の分化促進
処方時の注意点 発熱や下痢など、脱水の恐れのあるときはは休薬
ヨード造影剤を使用する検査のときは、2日前から投与を中止し、検査後48時間は投与を再開しない
女性で浮腫の頻度が高い(約12%)ため女性には15mg/日から開始する。

糖尿病患者には潜在性の心不全患者が多いため、駆出率(EF)が40%以下、あるいは脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)値が100fmol/mL以上では使用すべきではない。患者にはこまめな体重測定を指示し、急な体重増加があれば服薬を中止するよう指導しておく
血糖降下作用 中程度 中程度
インスリン分泌促進作用 なし なし
低血糖のリスク なし なし
肥満の助長 なし あり
副作用 消化器症状、乳酸アシドーシス 浮腫、貧血
禁忌 肝硬変、腎不全、循環障害、大量飲酒者 心不全、心不全の既往


薬効分類 αーGI グリニド薬
作用機序 二糖類を分解する酵素(αーGI)の作用を阻害し、糖吸収を遅らせる 膵β細胞膜上のSU受容体に結合してインスリン分泌を促進。SU受容体との結合は非常に短時間であり、即効かつ短期のインスリン分泌をもたらす。
SU剤と比べ、不必要なβ細胞の刺激が少なく、β細胞の疲弊をきたす危険性が少ないと考えられている。
血糖降下作用 弱い 弱い
低血糖のリスク なし ややあり
肥満の助長 なし 弱い
副作用 放屁の増加や腹部膨満は、特に投与開始初期(2〜3ヶ月)に多い。まれに腸閉塞(ハイリスク、腹部手術歴、高齢者)、重篤な肝機能障害がある。定期的な肝機能検査が必要(最初の6ヶ月間は月1回) 低血糖(SU剤のように、遷延する低血糖はほとんどない)
肝機能障害)
禁忌 腸閉塞の既往、炎症性腸疾患 重篤な肝・腎障害





SU薬 アマリール(グリメピリド)
オイグルコン(グリベンクラミド)
グリミクロン(グリクラジド)
・非肥満またはインスリン抵抗性の低い(=HOMA−R低値)例へ
・SU薬はできるだけ使用しない流れへ
-低血糖のリスク
-食欲亢進や体重増加の副作用あり、肥満を招く
-β細胞の疲労からインスリンの枯渇を招く
・高齢者、腎機能低下、他の経口血糖降下薬不応例へは第一選択となりうる
・イメージは体に鞭打つ優しくない薬
グリニド薬 グルファスト(ミチグリニド)
スターシス(ナテグリニド)
・軽症のインスリン分泌低下例へ適応
・食後高血糖の軽減目的に食直前内服
・使用目的も効果も やや中途半端な感
・糖毒性の強い治療初期に一時的に使用
ビグアナイド薬 メトグルコ(メトホルミン) ・肥満例またはインスリン抵抗性の高い(=HOMA−R高値)例へ
・心血管系へのエビデンスが豊富かつ薬価が安い
・高齢者と腎機能低下例には注意(原則使用しない)
・実際はほとんどの2型糖尿病で第一選択薬となる
チアゾリジン薬 アクトス(ピオグリタゾン) ・肥満例またはインスリン抵抗性の高い(=HOMA−R高値)例へ
・1日1回内服でよいという利点
・副作用が多い
-心不全、末梢浮腫、体重増加
-骨密度の低下
-食欲亢進
・RCTの結果や値段の面からも、あくまでBG薬の2番手という薬剤
αーGI薬 グルコバイ(アカルボース)
ベイスン(ボグリボース)
セイブル(ミグリトール)
・食後高血糖の抑制
・初期2型糖尿病(食後高血糖タイプ)へまず導入
・痩せ型、肥満型のどちらにも有効
・副作用は放屁と腹満、便秘。また導入1ヵ月後に肝酵素チェック(肝障害)
DPP−4阻害薬 ジャヌビア(シタグリプチン)
エクア(ビルダグリプチン)
ネシーナ(アログリプチン)
 





  副作用 特徴的な服薬指導
SU薬 体重増加 ACE阻害薬、ARBとの併用にて低血糖を誘発しやすいので、特に低血糖対策を指導
グリニド薬    食直前内服
ビグアナイド薬 乳酸アシドーシス
強い倦怠感、吐き気、下痢、筋肉痛など
ヨード造影剤を使用する検査のときは、2日前から投与を中止し、検査後48時間は投与を再開しない
チアゾリジン薬 むくみ、体重増加、心不全症状・兆候(息切れ、動悸など) 体重増加をきたしやすいので、食事管理を遵守するように
αーGI薬 おなら、腹部膨満感 食直前内服
低血糖時にはブドウ糖を服用
DPP−4阻害薬 胃腸障害  


  服用時点 1日投与回数
SU薬 食前または食後 1〜2回
グリニド薬 食直前 3回
ビグアナイド薬 食直前または食後 2〜3回
α−GI薬 食直前 3回
チアゾリジン薬 朝食前または朝食後 1回
DPP−4阻害薬 - 1回
(エクアは朝・夕2回、もしくは患者の状態に応じて朝1回)


作成日 2011年10月1日

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