ACE-IとARBの違い
ACE阻害薬はアンジオテンシンUを産生する酵素(=ACE)の阻害薬で
ARBはAngUのタイプ1受容体(AT1受容体)の拮抗薬である。
■適応症の違い
ACE-I
薬剤名 | 成分名 | 高血圧 | 腎性 高血圧 |
腎血管性 高血圧 |
悪性 高血圧 |
慢性 心不全 |
1型糖尿病に伴う糖尿病性腎症 |
レニベース | エナラプリル | ● | ● | ● | ● | ● | |
ロンゲス | リシノプリル | ● | ● | ||||
タナトリル | イミダプリル | ● | ● | ● | |||
エースコール | テモカプリル | ● | ● | ● | |||
コバシル | ペリンドプリル | ● |
ARB
薬剤名 | 成分名 | 高血圧 | 腎実質性 高血圧 |
慢性 心不全 |
高血圧及び蛋白尿を伴う2型糖尿病における糖尿病性腎症 |
ブロプレス | カンデサルタン | ● | ● | ● | |
ディオバン | バルサルタン | ● | |||
ミカルディス | テルミサルタン | ● | ○(申請中) | ||
オルメテック | オルメサルタン | ● | |||
ニューロタン | ロサルタン | ● | ● | ||
イルベタン | イルベサルタン | ● |
心不全に関して
・ACE-I、ARBのなかで適応とされているのは「レニベース」、「ロンゲス」、「ブロプレス」であるが、それ以外のACE-I、ARBは効果がないということではない。
・可能であれば高用量を用いる。高用量のほうが心保護効果が強いことを示唆する臨床研究・基礎研究は多い。しかし、現在のところ心不全における至適用量についてはコンセンサスが得られていない。
■ACE-I と ARBの違い
基本的に大差はないと考えて、ジェネラリストとしての業務は遂行可能と思います。敢えて、5つの点から、両薬剤を比較してみました。
ACE-I | ARB | |
心臓 | 多くの大規模臨床試験で慢性心不全に対する生命予後改善効果が認められており、今や心不全治療の第一選択薬である 【ガイドライン上の適応】 無症候性心不全(NYHAT度)から重症心不全(NYHA W度)にまで用いる薬剤 |
慢性心不全を対象とした多くの大規模臨床試験で、ACE-Iと同等に有用であることが示されている 【ガイドライン上の適応】 NYHAU度以上から用いるとされているが、NYHAT度でも空咳のためにACE-Iが使用できないときは用いるとよい |
腎臓 | 輸出細動脈の拡張による糸球体内圧の低下により腎保護作用がある。 | 輸出細動脈の拡張による糸球体内圧の低下により腎保護作用がある。 |
糖代謝 | インスリン抵抗性・耐糖能改善効果がある | インスリン抵抗性・耐糖能改善効果がある |
咳 | 副作用の中では、ブラジキニンの作用増強による咳が多く、投与1週間から1ヶ月以内で出現することが多い | ブラジキニン産生に影響を与えないため、空咳の副作用は少ない(←ゼロではない) |
妊娠中の高血圧 | 禁忌 | 禁忌 |
処方監査に関して
・ACE-I同士、あるいはARB同士の併用がないか。特に合剤が処方されているときは、特に注意。
・ACE-IとARBの併用については有効とするものと無効とするものがあるので、疑義照会はしない。
・K保持性利尿薬、K補給剤tの併用 ⇒血清K値の上昇に注意(特に腎機能障害のある患者)
■各論
最後に、各薬剤の豆知識をまとめてみます。
ACE-I
薬剤名 | 成分名 | 豆知識 |
レニベース | エナラプリル | |
ロンゲス | リシノプリル | ・肝代謝をほとんど受けず、未変化体のまま腎から排泄 |
タナトリル | イミダプリル | ・空咳の頻度が少ない |
エースコール | テモカプリル | ・排泄が尿中、糞中ほぼ同等であり、他のACE-Iのように腎排泄が主ではない |
コバシル | ペリンドプリル |
薬剤名 | 成分名 | 最大量 | 豆知識 | |
国内 | 海外 | |||
ブロプレス | カンデサルタン | 12 | 32 | |
ディオバン | バルサルタン | 160 | 320 | ・最も薬価が安い |
ミカルディス | テルミサルタン | 80 | 80 | ・胆汁からほぼ100%排泄されるため、腎機能障害患者に使いやすい |
オルメテック | オルメサルタン | 40 | 40 | ・ARBで唯一食事およびCYP3A4による影響を受けない |
ニューロタン | ロサルタン | 100 | 100 | ・ARBで唯一尿酸排泄作用を持つ。利尿薬との合剤では、有利な作用になる |
イルベタン | イルベサルタン | 200 | 300 | ・健常人と肝硬変患者および軽度から高度腎機能障害患者でAUCに差がない |
作成日 2011年10月17日
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