抗てんかん薬の選択

「てんかん治療ガイドライン2010」監修:日本神経学会 
http://www.neurology-jp.org/guidelinem/tenkan.html
がインターネットで閲覧可能です。




てんかん治療の第一歩は、正確なてんかん診断にあります。@発作がてんかん性のものであることを確認し、A発作型を診断し、薬物治療に臨みます。
予防薬と急性期治療薬に分けられますが、本回は予防薬に焦点をあててまとめます。


デパケンやテグレトールなどは、副作用、薬物動態、相互作用の奥が深いのですが、あまり細部にとらわれると全体が見れなくなるので、今回もザックリといきます。

@予防薬

てんかん治療の原則

■単剤を漸増法で。必要なら多剤併用へ
抗てんかん薬治療は単剤よりはじめる。単剤治療は2?3種類行い、それでも奏功しない場合には、多剤併用治療を行う



■単剤にどの薬剤を選択するか
  〜発作型にあった薬剤を選択(発作を悪化させてしまう薬剤がある)

まずは、今日の治療薬に掲載されているシンプルな表を覚えてしまいましょう。

(表1)
大分類 小分類 第一選択 第二選択
部分発作 単純部分発作 CBZ PHT、ZNS
複雑部分発作
二次性全般化
全般発作 欠神発作 VPA ESM
強直間代発作 PB、CLB、PHT
ミオクロニー発作 CZP
脱力発作 ESM
                    (「今日の治療薬2010」南江堂より)
注)ZNS;ゾニサミド(商品名 エクセグラン)、 ESM;エトスクシミド(商品名 ザロンチンシロップ/#エピレオプチマル散50%)、 CLB;クロバザム(商品名 マイスタン)、 CZP;クロナゼパム(商品名 リボトリール) 

やや詳しい次のような表もあります。
(表2)

てんかんのタイプ 第一選択 第二選択 避けるべき薬剤
悪化の恐れ
全身強直間代性 テグレトール
デパケン
マイスタン
欠神発作 デパケン
トピナ
マイスタン
ガバペン
テグレトール
ミオクローヌス デパケン マイスタン
リボトリール
トピナ
テグレトール
ガバペン
強直発作 デパケン マイスタン
リボトリール
トピナ
テグレトール
脱力発作 デパケン マイスタン
リボトリール
トピナ
テグレトール
フェニトイン製剤
部分発作 テグレトール
デパケン
トピナ
マイスタン
ガバペン
フェニトイン製剤
(「レジデントノート 増刊 日常診療での薬の選び方・使い方」(羊土社)より)


大日本住友製薬のHPには次の表が掲載されています。
(表3)


・発作型に合った薬剤を選ぶ、抗てんかん薬の中には発作を悪化させてしまう薬剤もあることを再確認してください。
・意外なことに、従来から使用されている抗てんかん薬の有効性については、RCTなどによるエビデンスに乏しく、推奨選択薬はいわゆるエキスパートコンセンサスに基づいている。また、ここ5年程度で海外で使われている抗てんかん薬が次々と国内で承認されており、このような背景から、各ガイドライン等が示す第一選択薬、第二選択薬にバラツキがあると思われる。



http://www.neurology-jp.org/Journal/public_pdf/049110769.pdf




■新規抗てんかん薬の位置づけ
1989年にZNS、2000年にクロバザム(CLB)が発売されてからは新薬の導入がなく、新薬の承認が海外に較べて著しく遅れていたが、2006年にGBP、2007年にトピラマート(TPM) 、2008年ににラモトリギン(LTG)、レベチラセタム(LEV 商品名イーケプラ) が承認・発売された
海外では単剤で使用されている薬剤もあるが、日本では保険上、他の抗てんかん薬で効果が不十分な場合の併用療法で適応を取得している。


新規抗てんかん薬を用いたてんかんの薬物療法ガイドライン
http://square.umin.ac.jp/jes/pdf/newaed_GL.pdf






■漸増していくときに、注意すること
  〜投与量と血中濃度の関係を頭の中でシュミレーションする

増量する際は、それぞれの薬剤の血中濃度の上昇の仕方の特徴を理解しておく必要があります。特に抗てんかん薬は、血中濃度の上昇の仕方に特徴があります。
ただし注意しておきたいのは、てんかんにおける抗てんかん薬の血中濃度は発作の抑制にとっての“目安”であり、絶対的なものではありません。薬物血中濃度よりも患者さんのてんかん発作のコントロールに注目して、各患者あった血中濃度があります。












■追加する薬剤は、どれを選ぶか

追加パターンはおおむね次のようになる

デパケン ⇒ラミクタールを追加
テグレトール ⇒デパケンを追加
フェニトイン製剤 ⇒デパケンを追加



■抗てんかん薬“同士”の薬物相互作用

薬剤 主な代謝酵素 酵素誘導 酵素阻害
CLB 3A4, 2C19
CBZ 3A4 1A2, 2C9
2C19, 3A4, GT
CZP 3A4
ESM 3A4
GBP
LTG GT 3A4
PB 2C9, 2C19 1A2, 2C9,
2C19, 3A4, GT
PHT 2C9, 2C19 1A2, 2C9,
2C19, 3A4, GT
PRM 2C9, 2C19 1A2, 2C9,
2C19, 3A4, GT
TPM 3A4 3A4
VPA GT 2C9, GT
ZNS 3A4

今日の治療薬2010 p866より(一部改変)




てんかん治療ガイドライン2010 日本神経学会より


■作用機序からの薬剤の分類

てんかん発作の機序
てんかん発症の原因は分からないことが多いが、発作の主な発生機序は以下の3 つである。
(1)( イオン )チャネルの障害による膜興奮性の増大
( ナトリウム )チャネル、( カリウム )チャネル、( カルシウム )チャネル
(2)( GABA )作働性神経伝達系の減弱
(3)( グルタミン酸 )作働性神経伝達系の亢進
デパケン Naチャネル抑制
テグレトール Naチャネル抑制
エクセグラン
フェニトイン製剤 Naチャネル抑制
マイスタン
ガバペン Caチャネル抑制
トピナ Naチャネル抑制
ラミクタール Naチャネル抑制


■副作用
用量依存性の副作用、特異体質的副作用、長期投与における副作用に分けて整理できます。
http://www.neurology-jp.org/guidelinem/epgl/sinkei_epgl_2010_13.html



A急性期治療薬
てんかん重積状態の治療指針
http://www.neurology-jp.org/guidelinem/epgl/sinkei_epgl_2010_09.html


同種同効薬45

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