輸液用総合ビタミン剤の比較
高カロリー輸液を処方するときに、乳酸アシドーシスの予防のため必ずビタミンB1を投与します。その他の必要なビタミンも合わせた高カロリー輸液用総合ビタミン剤が当院で3つ採用されていますので、その3つの使い分けについて整理します。
まずはザックリと以下のように頭に入れてください。循環器系の診療科でMVIが多用されることを日常業務で実感してください。
高カロリー輸液用 |
ワーファリン使用の予定なし | ネオラミンマルチV マルタミン MVI ビタメジン静注用 |
ワーファリン使用の予定あり |
MVI ビタメジン静注用 |
|
末梢静脈 | ビタメジン静注用 |
MVIだけがビタミンKフリーです!
TPNの患者なのになぜ内服薬であるワーファリンとの相互作用に注意しないといけないのか?と思うかもしれませんが、TPN施行例における薬剤の投与経路は、注射薬に限らず内服薬により行われる場合もあります。
水溶性ビタミンは、脂溶性ビタミンに比べ体内からの消失が早く、早期に欠乏症になりやすいです。逆に言えば脂溶性ビタミンは長期投与による蓄積に注意ということになります。
もう少し細かく各薬剤についてまとめていきます。
・必要なビタミンB1量は3mgが目安とされています。高カロリー輸液用総合ビタミン剤にはB1以外のビタミンも含めて1日1バイアルで十分です。たまにピーエヌツインのように1日2袋投与する高カロリー輸液それぞれに総合ビタミン剤を処方しようとする研修医がいます。
・マルタミンは溶解補助剤としてHCO-60(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油)を含むため、アナフィラキシーに注意。
・ビタミンAの過剰摂取は奇形を起こす可能性があります。MVIは、他の総合ビタミン剤と比べてビタミンAを大量に含むため妊婦に投与すべきではなく、特に妊娠3ヶ月以内の患者への投与は禁忌に近く、水溶性ビタミンのみのビタメジン静注用が適していると思います。
TPN用総合ビタミン剤の組成は、米国医学会(AMA)(American Medical Association)のガイドライン(1975年)に準拠した1日所要量に基づいています。「本剤は高カロリー経静脈栄養輸液添加用ビタミン剤であるため、単独投与及び末梢静脈内投与は避けること。」と添付文書に書いてあるように、末梢投与には処方できません。
■ビタミンB1欠乏症によるアシドーシスの発症機序
http://www.chichibu-ch.or.jp/txt/img/di_2006_07.pdf
■アシドーシスの治療
ビタミンB1欠乏症によるアシドーシスの治療は、メタボリン注(成分ビタミンB1)を1回100mg 1時間毎に症状が回復するまで急速静注します。特徴のある投与方法です。
(おまけ)ナロキソン注も似たような使い方をします。
〔麻薬による呼吸抑制ならびに覚醒遅延の改善 〕
ナロキソン塩酸塩として、通常成人1回0.2mgを静脈内注射する。
効果不十分の場合、さらに2〜3分間隔で0.2mgを1〜2回追加投与する。
作成日 2009.4.8
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