生理食塩液と5%ブドウ糖液の比較
米国では輸液製剤は基本的に0.9%生理食塩液(NS)と5%ブトウ糖液(5%G、5%TZ)のみで、残りは医師が必要に応じて薬剤部に調製を依頼しているとのことです。
日本には輸液製剤がたくさんありますが、全ての輸液製剤は生理食塩液と5%ブトウ糖液の混合したものと考えられます。内服薬とは全く違う輸液の考え方の勉強を、まずこの2剤を通して始めましょう。
血漿浸透圧と等しくするため、NaClのみを用いたのが生理食塩液、ブドウ糖を用いたのが5%ブドウ糖液です。浸透圧が異なれば痛みを生じますし、浸透圧の低い溶液が投与されれば赤血球が膨張し破裂してしまいます(=溶血)。浸透圧が等しいだけで、電解質の組成は非生理的です。
薬剤の溶解液・希釈液として役割と、輸液としての役割に分けて整理します。
■溶解液・希釈液としての比較
・安定性を確保するため
例1)シスプラチン注・・・5%Gに不安定なため、NSで溶解する。
例2)エルプラット注・・・NSに不安定なため、5%Gで溶解する。
・凝析・塩析を起こさないため
例1)フェジン注・・・凝析・塩析を起こすため、生食ではなく5%Gで溶解します。添付文書には「10〜20%のブドウ糖注射液で5〜10倍にすること」と書いてありますが、臨床では等張液である5%Gを使用しています。
・副作用の予防のため
例1)リトドリン注(ウテメリン注)・・・5%Gを使用します。電解質溶液の使用は肺水腫防止のため避けること。
・NSを含む電解質溶液との混合が避けられているもの
例1)ナファモスタット注(フサン注)NSで直接溶解すると難溶性の塩を形成するため、5%G or DWを加え完全に溶解した後、混和する。
例2)レミナロン注(エフオーワイ注)添付文書には書かれていないが、本には上と同じ内容が書かれている。
例3)ブイフェンド注 DWで完全に溶解した後、混和する。(理由知りません)
例4)ハンプ注 NSで直接溶解すると塩析を起こすので、一度注射用水で溶かした後にNS or 5%Gで希釈する。
・Na含有量が多いため、5%Gで溶かすほうが生理的であるもの
心不全、腎不全、高血圧症等ナトリウム摂取制限を要する患者へ投与する場合は注意。
例1)ホスミシン注
おまけ
・溶解したときの浸透圧を等張にするため、蒸留水を使用する注射薬
例)エンドキサン
■輸液としての比較
・体内分布
血管内に入った輸液は、間質液にそのまま速やかに分布します。これは血管壁を電解質が自由に移動できるためです。細胞内に入れるか入れないかは細胞膜のポンプなどにより決まり、細胞内液と外液の組成は全く違います。
細胞外液の中で最も多い陽イオンはNaです。それに対し細胞内液で最も多い陽イオンはKです。それから細胞外液で最も多い陰イオンはClで、細胞内液で最も多い陰イオンはリン酸です。この知識は結構いろいろな場面で出てきますので覚えておいてください。
生食:すべて細胞外液のみに分布したまま(細胞内液には分布しない)。スペースに応じて血管内と細胞間質に約1:3の割合で分布すると言われますが、実際には血管内により多く約1:2で分布することが知られています。
5%ブドウ糖液:すぐにブドウ糖が分解され、まず水として細胞外液に分布します。細胞内液に比べ低浸透圧になるため、等張になるまで細胞内液へ水の移動が起こります。
細胞内に水分を補充すべきか否かで両製剤を使い分けます。
作成日2009.4.9
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