ワンポイント16

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予後因子と予測因子

■予後因子 prognostic factor
治療の有無に関わらず、再発、死亡など病気の予後を推測する因子
問)乳がんの予後因子を知っているだけ挙げよ。
→年齢、腋窩リンパ節転移個数、腫瘍径、臨床病期(TNM分類)、病理学的異型度、HER2蛋白の発現

■予測因子 predictive factors
治療効果を予測する因子。「治療効果予測因子」と呼べば意味がはっきり理解できると思っています。
問)乳がんの予測因子を知っているだけ挙げよ。
→閉経状況、ホルモン受容体(ER,PgR)、HER2蛋白の発現

(補足)
 純粋な予後因子では、治療の有無にかかわらず、その発現状況に応じて独立した予後を示す。この場合、予後因子の発現状況と治療効果に相関性はみられない。
 一方、純粋な予測因子では、治療が行われた場合、その発現状況によって予後が大きく左右され、陰性例に比べ陽性例で著しい治療効果が得られる。
 これまでにさまざまな予後因子、効果予測因子が発見されているが、純粋な予後因子あるいは効果予測因子はむしろ少なく、多くが混合的な性格を有している。最近、両者を兼ねる指標として注目されているのが、HER2である。これまでに、HER2陽性例は陰性例に比べて予後が有意に不良であること、CMF療法に比べアンスラサイクリンを含むレジメンに対してより高い感受性を示すこと、などが報告されている。



ではこれから、予後因子、予測因子を頭の中で明確に区別することが、臨床的にどのように生かされてくるのか,事例を挙げて説明します。中堅以上の薬剤師にとっては薬物療法の効果を正しく見極めるための大切な基礎知識となります。

ピットフォール
学会等でよく聞く例・・

横軸は時間,縦軸は生存率を表していると見てください。
『分子標的治療薬Aを用いて治療を行った。腫瘍のGENE EXPRESSION PROFILE(マーカー)を比較してみたところ,ある遺伝子群のmRNAが過剰発現していたグループは発現していなかったグループに比べ予後がよかった』と説明があったとします。それに続く考察や結論の内容(=データの解釈)は,マーカーが予後因子なのか予測因子なのかに注意して聞く必要があります。

つまり,分子標的治療薬Aはマーカーが(+)の患者によく効く,このマーカーは予測因子である,と誤解しないように注意して結論を聞く必要があります。
過剰発現は単なる予後因子だけの可能性があるからです!

新治療を行った患者のデータだけでは、注目しているマーカーが予後因子か予測因子かはわかりません。では、注目しているマーカーが予測因子であることを示すには、どのようなデータが示されればよいのか?という疑問が生じると思いますが、少し込み入った話になりますので、今回は説明を省略します。

作成日 2009年8月3日

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