β遮断薬の臨床での使用実態のまとめ

1.高血圧症

□薬剤による降圧を目標に掲げたなら,2つのアプローチ方法がある。

(1) 心拍出量の低下
(2) 末梢血管の拡張
です。
□β遮断薬は降圧薬として使用することがありますが、血管を拡張させる作用はなく,β2遮断作用により逆に収縮させます。
□β遮断薬の血圧に対する作用機序として、
心拍数の低下(β1)と心収縮力の低下(β1)が挙げられます。つまり心臓からの血液の排出量を減らすことで血圧を低下させようとしています。β1受容体への選択性が高ければ、末梢血管の収縮を回避できます。
□また、β1遮断作用は、腎臓のレニンというホルモンの分泌を抑制し、血圧を上げるアンギオテンシンUを減少させる作用によって血圧を下げます。
JSH2009(日本高血圧学会)では、β遮断薬を心拍数の多い症例、若壮年例、ストレスの強い症例に積極的に使用すべき薬剤とし推奨しています。


2.狭心症(労作性狭心症)
□一言で狭心症と言ってもさまざまな病態に分けられ、病態に応じて薬剤が選択されます。
β遮断薬が第一選択されるのは「労作性狭心症です。
□β遮断薬の狭心症に対する作用機序として,心拍数の低下(β1),心収縮力の低下(β1)が挙げられます。心臓の仕事量を減らし、狭心症患者の心臓の酸素需要量を減らすという視点からのアプローチです。


3.心筋梗塞後
国内での処方頻度は低いのですが,心筋梗塞後にβ遮断薬を投与することがあります。再発予防(二次予防)と予後改善を目的にしています。
□心不全合併例や血行動態不安定例ではβ遮断薬の投与により心不全を増悪させることがあります。一方,高血圧,頻脈傾向,心房細動合併例では使用しやすいと言われています。
□エビデンスの強さは?
JNC-Y(米国高血圧合同委員会)においては,心筋梗塞後の症例にはISA(−)のβ遮断薬が「強制適応」(compelling indication)とされています。AHAガイドライン(アメリカ心臓協会)では急性期投与が死亡率減少に繋がるとされ,早期投与(可能であれば発症数日以内)がClassTで推奨されています。
□日本の「心筋梗塞二次予防に関するガイドライン(2006年改訂版)では,低リスク群以外の心筋梗塞(エビデンスA),梗塞後狭心症,高血圧を合併するもの(エビデンスB),現在心不全はないが,。急性期に左心不全のあったものや梗塞範囲の大きいもの(エビデンスA)と記載されています。


4.不整脈 ・突然死予防
□カテコラミンが心筋の電気生理学的特性を影響し,不整脈の発生を促すことがわかっています。β遮断薬は交感神経をブロックすることにより,この影響を全身および心臓局所的にバランスよく作用していると考えられているそうです。 (β遮断薬の不整脈に対する機序は少々こじつけっぽい,あいまいな説明だが,詳細に知らなくても業務に支障はないと思われる。)
□β遮断薬による不整脈の停止・抑制効果はほかの不整脈と,比較して必ずしも強力とはいえません。Ca拮抗薬やNaチャネルブロッカーなど他の抗不整脈薬の中での、β遮断薬の位置づけについては別の機会に説明することにします。 β遮断薬の大規模臨床試験における突然死の予防効果を比較すると,β遮断薬が群を抜いて優れているようです。


5.心不全
□“β遮断薬=心不全に禁忌”という10年ほど前の大学で教えられた知識は、教科書的な浅い知識で,現場では通用しません。現在は,β遮断薬は長期的に交感神経の働きを抑制することにより,不全心筋を保護すると考えられています。細かい作用機序は臨床で生きてこないため知識であるので省略します。
□以前は心不全の治療薬として広くoff-labelで使用されていましたが,2002年に「アーチスト」が保険適応を取得しました。昔も現在も1人で1日10枚くらい調剤するくらい頻繁に処方されていることから,臨床的な効果の手ごたえは相当なものかもしれません(あるいは,他の心不全治療薬が頼りない?)。
□欧米のガイドラインが推奨するメインテートも,本邦で心不全に対する治験が進んでおり,近い将来承認されるようです。生存率などのハードエンドポイントでhead-to-headの2剤のランダム化比較検証試験が行なわれるかもしれません。
□<アーチストの添付文書より>
次の状態で、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、利尿薬、ジギタリス製剤等の基礎治療を受けている患者   虚血性心疾患又は拡張型心筋症に基づく慢性心不全
カルベジロールとして、通常、成人1回1.25mg、1日2回食後経口投与から開始する。1回1.25mg、1日2回の用量に忍容性がある場合には、1週間以上の間隔で忍容性をみながら段階的に増量し、忍容性がない場合は減量する。用量の増減は必ず段階的に行い、1回投与量は1.25mg、2.5mg、5mg又は10mgのいずれかとし、いずれの用量においても、1日2回食後経口投与とする。通常、維持量として1回2.5〜10mgを1日2回食後経口投与する。 なお、年齢、症状により、開始用量はさらに低用量としてもよい。また、患者の本剤に対する反応性により、維持量は適宜増減する。


6.その他
(循環器内科領域以外)
組織・器官 作用 薬剤 適応
心、血管 心拍出量低下(β1遮断)と血管収縮による門脈圧低下(β2遮断)作用により,出血を予防。 インデラル ・食道静脈瘤の出血予防
・海外ではかなり以前からゴールドスタンダード
骨格筋 -

アルマールインデラル

アマリールは本態性振戦に適応あり
・甲状腺機能亢進症による振戦に処方インデラルが処方されている→チラージン+インデラルの処方

- ミケラン ・抗不安作用
- インデラル

・片頭痛”予防”(処方頻度は少ないと思います)
・プロプラノロールはリザトリプタン(マクサルト)と併用禁忌。

毛様体

房水産生抑制

チモプトール点眼液
ベトプティック点眼液

・緑内障、高眼圧症


作成日2009年8月16日

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