添付文書の「有効成分に関する理化学的知見」の項に記載されている分配係数は,どのように読み解けばいいのでしょうか?
分配係数とは、『n-オクタノール/水分配係数』のことです。これは個々の薬物について、油に溶解する割合が多いか、水に溶解する割合が多いかを示した数値で、『油水分配係数が1より大きければ大きいほど脂溶性薬物、1より小さければ小さいほど水溶性薬物』に分類されます。 通常、分配係数の対数(logP)で示されますが、『水溶性薬物はマイナスになり、脂溶性薬物はプラス』で表記され、その薬物の脂溶性が高いほど、大きな値になります。
薬剤名 | 分配係数 | logP | 脂溶性/水溶性 |
タガメット | 1.5 | 0.17 | 脂溶性 |
ガスター | 0.03 | -1.52 | 水溶性 |
ザンタック | 0.15 | -0.82 | 水溶性 |
アシノン | 0.70 | -0.15 | 水溶性 |
アルタット | 29.6※ | 1.47 | 脂溶性 |
プロテカジン | 2.48 | 0.39 | 脂溶性 |
※クロロホルム/緩衝液
この1,2行の記載から、どのような情報を引き出せるのでしょうか?読み手である薬剤師の能力に左右されます。以下にまとめてみました。
情報 | 脂溶性 | 水溶性 |
胃腸管吸収 | よい | 悪い |
初回通過効果 | 受けやすい | 受けにくい |
組織移行 | よい | 悪い |
排泄経路 | 肝臓 | 腎臓 |
肝障害時の血中濃度 | 上昇しやすい | 変化なし |
肝障害時の投与量 | 減量を検討 | 変化なし |
腎障害時の血中濃度 | 変化なし | 上昇 |
腎障害時の投与量 | 変化なし | 減量 |
酵素阻害・酵素誘導 | 影響大 | 影響少 |
透析による除去 | 不可 | 可能 |
中枢性副作用 | 頻度大 | 頻度少 |
作成日 2009年.8月19日
ワンポイント21