ラシックス注の持続点滴について考える


ラシックス注の持続静注はしばしば処方されますが、どのようなときに行われるのでしょうか。
添付文書には静注または筋注の記載があり、DIVに関しての記載はありません。
※ DIV;drip intravenous(イントラヴィーナス) injection  点滴静脈注射
 

Rp.)ラシックス注 20MG/2ML  2A
  5%ブドウ糖注   /20ML  1本
   精密側管点滴(DIV)

何で静注ではないのか?ちびちび入れてターゲット部位での薬物濃度を治療域にもっていけるのか?という疑問が生じます。
ある本によれば、心不全の患者においては心機能低下により血圧低下が見られることが多く、ラシックスの静注後にさらに一過性の血圧低下が誘発される。これはラシックスの利尿効果が投与後数分で現れ、急激な利尿を促し血圧を低下させるためであるそうです。この現象を回避するためのラシックス持続点滴投与が行われることがあるようです。

エビデンスとしては小規模な臨床研究レベルのデータしかないようですが、経験的なものから代々医師の間で引き継がれているようです。
わかっていないことをわかる、ことも大切ですね。


血圧に与える影響のほか、
・尿量
・電解質変動
・ラインキープの難しさ、配合変化
の3点から考察を付け加えてみたいと思います。

【尿量】
ラシックス注は、1回注入の繰り返しより、持続点滴の方が、利尿効果があるという報告もあるらしいです。
しかし尿量が保てないのであれば利尿剤だけに頼らず、それ以外の方法、例えば心機能が悪いのであればカテコルアミン(イノバン注)やPDEV阻害薬(ミルリーラ注)、 ハンプ注などを考慮するという考え方もできると思います

【電解質変動】
シャープな薬理作用であることを念頭に置けば、血圧の低下だけではなく電解質変動も起こると考えられるが、デリケートな対応が求められるのが血圧の方なのだろう。ただし、
不整脈を起こしている低K血症の患者に対しては注意が必要かもしれません。

【ラインキープ】
時間あたりの投与量が少ないときは、ラインキープに難渋します。他剤を投与している液量が十分なラインがないとつらいと思われます。
また、持続点滴の処方が現場では散見されますから、ラシックス少量と他の注射薬との間でライン内で配合変化が起こることはないのかもしれません。しかし、いうまでもなくラシックス注は酸性の薬剤(pH)であり配合変化が多い注射薬として知られていますから、配合変化の心配もやや気になります。


■おまけ
〜ラシックスをアルブミン製剤と併用したときの投与順序

・ラシックスをアルブミン製剤と併用して投与することがあります。その場合の投与順序ですが、アルブミンを点滴した後に、ラシックスを静注します。
・推測される病態は「浮腫」です。浮腫はサードスペースに体液が貯留した状態です。この状態を改善するにはサードスペースから水を体外に排出してやればよいわけですが、最初にラシックスで利尿をかけても主に血管内の水が出るだけで、結局edemaは改善しないわ血管はhypoになるわ、という状況に陥っていってしまいます。
・そこで、まずアルブミンを投与しサードスペースから水分を血管内に引っ張り、その後で利尿をかけてやるのです。これによりバイタルを安定させたまま浮腫を改善することが出来ます。



作成日2010年7月1日

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