副作用は、大きく2つに大別できます。
@頻度が高いが、重篤ではない副作用
A頻度が低いが、重篤な副作用
なお、頻度が高くて重篤な副作用がある薬物は、よほどニーズがなければ開発段階で開発中止となり、なかなか市場にでてきません。
Aについて、実践的でびっくりするほどわかりやすく書かれたマニュアルが存在します。「重篤副作用疾患別対応マニュアル」です。医師が中心の関係学会と日本病院薬剤師会が協力して作成されました。医薬品の使用により発生する副作用の「予測・予防型」の安全対策と言えます。
本マニュアルは「患者の皆様へ」と「医療関係者の皆様へ」から成り立ちます。今回は「手足皮膚症候群」を取り上げ、「患者の皆様へ」のほうを紹介します。(一部省略あり)
※インターネットでの閲覧と、書籍の購入は以下の通りです。
・インターネットでの閲覧
http://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/tp1122-1.html
・書籍の購入方法 JAPICに直接申し込む(本屋では買えません)
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「手足症候群」は、抗がん剤によって手や足の皮膚の細胞が障害されることで起こる副作用です。
- 「手足症候群」にみられる症状
- 手や足の「しびれ」「痛み」などの「感覚の異常」
- 手や足の皮膚の
- 「赤み(発赤、紅斑)」
- 「むくみ」
- 「色素沈着」
「角化(皮膚表面が硬く、厚くなってガサガサする状態)」
「ひびわれ」
- 「水ぶくれ(水ほう)」
- 爪の「変形」「色素沈着」
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手足症候群」を起こす可能性がある代表的な薬として次のものが知られています
●注射剤
フルオロウラシル
ドキソルビシンリポソーム注射剤
ドセタキセル
●経口剤
カペシタビン
テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム
フルオロウラシル
テガフール・ウラシル
ソラフェニブ
スニチニブ
初期症状
手や足にしびれ、ピリピリするような感覚の異常や、やけどした時のような痛みが起こります。このような感覚の異常は、手や足に見たところ変化がなくても起こることがあります。また、手足が全体的に赤くはれぼったくなったり(図1)、部分的に赤くはれたり(図2)、水ぶくれができたりします。
特にかかとや手の指先など力のかかるところに症状がでやすいことがわかっています。
早期発見と早期対応のポイント
- 抗がん剤の治療が始まったら自分の手や足をよく観察してください。
- 手足症候群の初期症状に気づいたら、できるだけその部位に刺激を与えず、安静を保つようにして、すぐに担当医に相談してください。
- 手足症候群は症状が軽い初期段階のうちに対処すれば良くなる副作用です。長時間または繰り返し同じ部位に圧力がかからないようにすることも予防に役立ちます。
手足症候群の予防、悪化防止のために、以下のことに心がけてください
- 長時間の歩行や立ち続けることを避けて足に力がなるべくかからないようにします
- 靴は柔らかい材質で足にあったものを履くようにします
- 厚めの靴下やジェル状の靴の中敷を使用して足を保護します
- きつい靴下をはかないようにします
- 手足に保湿クリームを塗り、爪の手入れをします
- 熱い風呂やシャワーを控えてください
- 直射日光にあたらないようにします
手足症候群の重症度(グレード) |
重症度 |
(症状) |
1 |
日常生活に支障を来していない
- しびれ
- 物に触れた時の不快な感覚
- 軽い焼けるような、またはチクチク刺すような感覚
- ピリピリするような感覚
- 痛みを伴わない腫れ
- 痛みを伴わない赤み
- 爪の変形
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2 |
痛みを伴い日常生活に制限を来す
- 痛みを伴う赤み
- 痛みを伴う腫れ
- 皮膚の角化(皮膚表面が硬く、厚くなってガサガサする状態)とひび割れ
- 爪の強い変形・脱落
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3 |
強い痛みがあり日常生活ができない
- 水ぶくれ
- 高度な皮膚の角化(皮膚表面が硬く、厚くなってガサガサする状態)とひび割れ
- 手または足の激しい痛み
- 皮膚の潰瘍
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作成日 2011年9月4日