梅毒に対してはペニシリンが第一選択です。
処方例)サワシリン(250mg) 6CAP 分3

投与期間は
第1期で2-3週間
第2期で4-8週間
第3期以降で8-12週間

です。

サワシリンの効果を高めるためにベネシッドを投与していたという話を病棟担当者から聞きました。添付文書に載っているそうです。私も知りませんでした。
『ペニシリン、パラアミノサリチル酸の血中濃度維持・・・
プロベネシドとして、通常、成人112g (48)4回に分割経口投与する。』

(ベネシッドの添付文書より)

この事例から学べることは2つあります。
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@サワシリンの効果を高める方法についてPK/PD的に考える
 ベネシッドは、サワシリンの尿中への排泄を妨げる作用があるため、サワシリンの血中濃度を維持し効果を高めます。
相互作用を逆手に取ったこの方法は、サワシリンがTime above MICのタイプの抗菌薬であるから成り立つ話です。もしサワシリンがCmax/MICのタイプの薬剤であれば、いくらベネシッドで血中濃度を維持しても、サワシリンの効果を高めることはできません。Cmax/MICのタイプの薬剤であれば投与量を増量しないとダメだということです。

Time above MICのタイプの抗菌薬の作用を強める方法は、
方法1)分割投与
方法2)排泄を阻害する薬剤の併用
が考えられます。

サワシリンのように排泄を阻害する薬剤があれば方法2)が使えますが、一般的には方法1)分割投与が広く行われています。


本症例が分割投与を選択しなかった理由はよくわかりません。分割投与が服薬コンプライアンスを悪くさせることを避けたのかもしれません。感染症の治療は短期決戦です。確実に薬剤を服薬させて、細菌を一気に叩くことが耐性菌の発現を防ぐために重要だからです。

Aベネシッドの投与目的を理解する
〜痛風・高尿酸血症治療薬の臨床での使用実態を理解する

ベネシッドの処方意図を理解していないと困る事が生じてきます。ベネシッドがサワシリンの効果を高める為に処方されているとしたら、梅毒治療薬のペニシリンをOFFにしたらベネッシドも同時にOFFしなければならないということです。難しいですね・・・。もしも痛風・高尿酸血症に対しベネシッドを使っているのなら,継続投与が必要です。痛風・高尿酸血症治療薬の中止については、現在のところコンセンサスはありません。高血圧や高脂血症と同様、痛風・高尿酸血症の治療は生涯治療といわれ、薬剤を一生のむ必要があるとの考え方もあります。

大学で習う薬効と、臨床での使用実態は大きくかけ離れており、大学・大学院でも教わることはないでしょうから、ここで一気にまとめておきます。

(痛風・高尿酸血症治療薬)

 尿酸の産生過剰型
(造血器腫腫瘍の治療中に起こる続発性高尿酸血症も忘れずに!)

→尿酸の産生を抑える薬剤を使用
排泄低下型



→尿酸の排泄を促進する薬剤を使用 
 
ザイロリック

 ユリノーム・ベネシッド・パラミジン

一応、上記のように治療薬の使い分けについて説明されていますが、痛風・高尿酸血症治療薬として臨床で使用されているのは,ほとんどがザイロリックです。尿酸ができてしまってから作用する薬剤(排泄促進薬)より、尿酸自体の生成を抑えてしまうほうが、根本的な治療である気はします。集計したわけではありませんが,私の調剤経験から言うと「痛風・高尿酸血症」に対するザイロリックの処方頻度を100とすると,ユリノーム5,ベネシッド2,3,パラミジンほぼ0、くらいです。

今回の話を聞くまでは、初回の面談時にザイロリックではなくベネシッドが処方されている事に違和感を感じ、尿酸値が高いと指摘されたことがあるのか患者に確認する以外、ベネシッドの処方意図は理解できなかったでしょう。

(適応外使用)




 治療薬  臨床使用(適応外)
 ザイロリック  口内炎予防(含嗽液)
 ベネシッド  VISTIDE注(cidoforvir)(未承認薬)による腎障害の予防

同種骨髄移植後の合併症の一つにアデノウイルス感染症があります。現在,アデノウイルスに対する有効な治療薬はありません。国内未承認薬であるVISTIDE注を使用します。
そのVISTIDEによる腎障害の予防のために、ベネシッドを以下のように投与します。
VISTIDE
投与3時間前:2g(=8)
投与2時間後1g(=4)
投与8時間後1g(=4)
1日16錠です。かなり大量です。

 パラミジン  ・ワーファリンと併用してワーファリンの作用を強める。

 ワーファリンと相互作用のある薬剤が多くありますが、パラミジンはその相互作用を“利用して”、ワーファリンの投与量を減らす目的で現在でも広く処方されています。機序は
今まで血漿蛋白結合置換と思われていましたが、実は代謝阻害(CYP C)によるものだったことが分かっています。

 どのような場合にパラミジンを併用するのか?の基準について勉強したことがありませんが、ワーファリンを5mg以上に増量しても効果がでないワーファリン抵抗性の方へ、パラミジンを併用することがあるとあるHPで読んだ事があります。 
 パラミジンカプセル(300mg)の常用量は1日2〜4カプセル、2〜4分割ですが、ワーファリンの血中濃度を高める目的に使用する場合には、1日1カプセルが用いられます。併用時の注意点は、一度、ワーファリンの投与量を減量してから、必要に応じてワーファリンの量を漸減していくということです。

※パラミジンはNSAIDとしても適応を取っているが,臨床でNSAIDとして処方されることはほとんどありません

 コルヒチン  ・ベーチェット病・・・眼科、皮膚科から処方
・掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)

※痛風発作予防薬(適応内)として使用されることは、ほとんどありません。

紹介したコルヒチンの適応外使用は、あの「ポケット医薬品集」にも載っていません。薬剤師になって10年以上薬剤師をやっていると、「ポケット医薬品集」にも抜けがあることにしばしば気付かされます。

作成日:2009.2.28

ワンポイント7

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