ワンポイント71

痙攣重積に対するセルシン、アレビアチン、フェノバールの使い分け

痙攣重積の診断
1回の痙攣が20分以上持続する場合と、意識が戻らないまま2回以上痙攣を繰り返す場合を痙攣重積といい、最近の報告では痙攣重積は1時間以内にとめるべきであり、さもなければ重大な脳損傷を残しかねないとしている。

痙攣重積のマネジメント
ジアゼパムは静注では15−20分で効果がなくなるため、その場の1回の痙攣を止めるだけの薬剤と理解しておくべきである。痙攣した際に、ジアゼパムの静注を繰り返すというアプローチで時間を浪費してはならない。痙攣重積と診断したらすぐアレビアチンかフェノバールの投与を考慮すべきである。

小児では重積が治まってから長期に内服させる薬剤としては、アレビアチンは多毛、歯肉の過形成などのために嫌われる傾向があり、重積の治療にフェノバールを推奨する専門医も多い。

しかし、一般的に痙攣重積の場合の第一選択剤としてはアレビアチンが推奨される理由が2つある。
1つは、アレビアチンやフェノバールはある程度の量(loading dose)が入って初めて効果の出てくる薬剤であるため、効果が出てくるまでに起きる痙攣にはやはりジアゼパムの静注が必要なことである。この場合、アレビアチンとジアゼパムの併用はさほど問題にされていないが、フェノバールとジアゼパムの併用は呼吸抑制が強いため要注意である。
2つ目の理由は、アレビアチンは効果の出てくる量は18mg/kgであり、50mg/分以下のスピードで静注すべしという投与法も確立された感があるが、フェノバールの使用法に関しては専門医によってまちまちであり、いつでも呼吸管理のできる体制で投与すべきで、一般医向きとはいい難いことである。アレビアチンは18mg/kgを20分以上かけて投与するわけであるが、その際最も注意すべき点は低血圧であり、次いで不整脈(心房細動、洞性頻脈)、呼吸抑制などで、これらが出現した場合には、投与をしばらく中止するかその静注のスピードを遅くすることで容易に回復する。したがって、血圧、心電図モニター、呼吸を観察しながらであれば危険はない。内服されたアレビアチンが血中に残っている患者の場合に、多すぎるアレビアチンが追加されると上記の副作用が起こりうるため、家族からの病歴や痙攣の状態、副作用の出現などから、投与のスピード、量を個々の症例で判断しなくてはならないのである。


「研修医 当直御法度 症例帳」(三輪書店)より引用
作成日 2012年11月27日

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