ワンポイント8

index

質問:「ペニシリンアレルギーがある患者さんが入院してきました。手術を控えているのですが、
術後の抗生剤の選択はどうしたらいいのでしょうか?セフェム系なら大丈夫ですか?



************************************************************************
知らないでは済まされない、誰でも必ず1度は直面する内容です。
通常1週間程度の手術入院であれば3-4日抗生剤を点滴で投与して、その後経口薬に切り替え退院してい
きます。

アレルギーは原因物質の化学構造と密接に関係すると考えられますので、ペニシリンアレルギーが
あれば“βラクタム系もすべてダメ”と考えがちですが、ペニシリンアレルギーがあっても“第三
世代”セフェムは使用可能です(これはかなり有名!)。

第一世代、第二世代セフェムはリスク有り、カルバペネムもリスク有りです(最近、ペニシリンア
レルギーの患者に第二世代を使用しても交差反応は出ないというメタ解析があったようです)。

そこで迷うのが、第三世代(第二世代?)を選ぶのか、モノバクタムやマクロライドなど化学構造
の違うものを選ぶのか”
ということですが、コレに関しては一定の見解は得られていないようです。
当然ですがガイドラインにも書かれていません。ケースバイケースで考えるしかありません。

抗生剤選択の基本は
・病巣部位に移行性のいい薬剤の選択
・予想される起因菌にスペクトルをもつもの
となりますが、たとえば、癌化学療法後の免疫力が弱っている患者に化学構造が違うという理由で
静菌的作用しかもたないマクロライドを選択するのはアレルギーを回避できるという点ではいい
のですが、有効性の点でどうなのでしょうか。
WBCがどのくらいまで低下したら殺菌的抗生剤を
使用しなければいけないとかの基準はないと思います。)

(おまけ)あまりエビデンスがなさそうな感じがしますが・・・
抗生剤の作用が静菌的なのか殺菌的なのかを知っておくことは、次の2つのことへも応用できます。
(1)併用の可否:2剤以上の抗生剤を併用する場合、殺菌的作用を有する抗生剤と、静菌的作用を有する
抗生剤を併用すると拮抗が起こるため、避けるほうがよいとも言われる。

(2)投与順序:併用する場合は、殺菌的→静菌的の順序で投与するのがよいといわれている

ペニシリンアレルギーの頻度が大体5%、アナフィラキシーの起きる確率は10万人当たり1-50
人とされていますので、大体数万分の1の確率でアレルギーではなくアナフィラキシーを起こす
体質の患者に出会うことになります。
その患者にアナフィラキシーショックを起こす薬剤を投与してし
まうケースに遭遇するというダブルの不運にめぐり合わないことを祈ります。

10年ほど前はアレルギー歴のある患者に皮内反応を使っていました。
200410月、日本化学療法学会の提言に基づき、厚生労働省は皮内反応を中止する旨の「医薬品・医療
用具等安全性情報」を出しました。

今のガイドラインではアナフィラキシーを起こさないようにすること力点が置かれているのではなく、
アナフィラキシーは予知ができないので、起こってしまったときに速やかに対応することが求められ
ています。

http://www.chemotherapy.or.jp/journal/reports/hinai_anaphylaxis.html(Q&Aは必見です)

作成日 2009.3.9

TOP PAGE