NSAIDsを中心とした鎮痛・解熱薬の使い分け
 NSAIDsを中心に、鎮痛・解熱薬をザックリとまとめました。取り上げた薬剤は少ないように見えるかもしれませんが、これだけ知っていれば処方薬の7.80%以上をカバーできると思います。深入りした細かい知識にとらわれないで、大切な基本をおさえましょう。




アセトアミノフェン

2011年1月、成人の鎮痛領域における用法・用量が1回300-1000mg1日4000mgまで改訂された。
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1日総量1500mgを超す高用量で長期投与する場合には定期的に肝機能検査を行い、患者の状態を十分に観察すること。高用量でなくとも長期投与する場合にあっては定期的に肝機能検査を行うことが望ましい。

アルコールの多量常飲者低栄養状態で肝細胞壊死のリスクが高まる。
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アセトアミノフェンは、鎮痛および解熱作用をもつが、抗炎症作用は弱い。よって、リウマチには使われない。
鎮痛効果はNSAIDsと同等。
中枢に作用して、視床と大脳皮質の痛覚閾値を上昇させると考えられている。一方NSAIDsは末梢におけるCOX阻害作用により鎮痛効果を示す。よって両薬物の併用により、中枢性のおよび末梢性の両方の鎮痛効果を得られると考えられる。
アセトアミノフェンのCOX阻害作用は非常に弱い。NSAIDsによるPG産生阻害により引き起こされる消化性潰瘍、腎機能障害、血小板機能障害は起こりにくいと考えられる。

小児への投与【インフルエンザ脳症】・・・NSAIDsはインフルエンザ脳症を悪化させる恐れがあるかもしれないと疑われている。よって、小児に対するインフルエンザに伴う発熱には、アセトアミノフェンを第一選択とする。

妊婦への投与・・・NSAIDsの胎児への催奇形性の指摘は特にないが,妊娠後期に使用すると胎児の動脈管の早期閉塞を促すことがある。よって,NSAIDsよりもアセトアミノフェンのほうが安全性が高いとされている。
□剤型も
     錠剤 
コカール錠
     散剤 アセトアミノフェン末(商品名;ピリナジン)
     坐剤 アンヒバ坐剤(小児用)
 と揃っている
□鎮痛領域での成人の通常量は300mg〜4000mg/回である。
コカール錠は200mg/錠であるから、1回2錠服用する。1回1錠は照会してもよい。
血小板に作用しないため、血小板減少症を起こしている患者にアセトアミノフェン末が選択されることがある。
□添付文書には消化性潰瘍のある患者に慎重投与となっているが、副作用のところに消化性潰瘍の記載はない。

□アセトアミノフェンの肝障害 中毒時の解毒方法について
                    →ワンポイント24-27 薬物性肝障害


クリノリル
□腎障害を持つ患者に使用される。
□腎機能障害を持つ患者にNSAIDsを減量する必要があるか?答えはNoである。
□当院ではなぜか眼科のクリニカルパスに組み込まれで処方されている。腎内での処方頻度はそれほど多くない。
□クリノリルもロキソニンもプロドラックである。肝機能が衰えている患者に投与すべきではない


ロキソニン
□有効性、安全性に優れ、NSAIDsの王様的存在になった。
□クリノリルもロキソニンもプロドラックである。肝機能が衰えている患者に投与すべきではない。
□血中にはロキソプロフェン(未変化体)のほか、trans-OH体(活性代謝物)の型で存在する。最高血漿中濃度に到達する時間はロキソプロフェンで約30分、trans-OH体で約50分であり、半減期はいずれも約1時間15分(→下図参照)。
□PKとPDの間にタイムラグがあまりないようだ。つまり、血中濃度上昇と比例して鎮痛効果を示すということ。自分で飲んでみればわかる。
よってTmaxを過ぎて除痛できなければらいくら待っても除痛できないだろう。どの本にも書いていない。
□だから、例えば痛みの非常につらそうな様子で窓口に来る患者に、ロキソニン1回1錠 頓服で、6時間空けて、という処方が出ていると少し心が痛む。
ロキソニンの活性代謝物のTmaxは約1時間だから、1時間過ぎても効かなければあと5時間、痛みが治まらないと推測できるからである。
□「6時間空けて」の根拠は不明。有効性というより安全性を考慮した患者への指示と思われる。
□添付文書によればロキソニンの頓服は1回1〜2錠が基本。1回1錠でもそこそこの効果はあるが、痛みが強い場合は積極的に2錠投与すべきであろう。夜に当直で診る若い医者は1回1〜2錠であることを知らないのだと思う。

(Q&A)
Q 
クローン病にNSAIDsを使うと症状が悪化するというのは本当なのでしょうか?
A:NSAIDsが消化性潰瘍には禁忌となっており、潰瘍性大腸炎,クローン病には慎重投与[病態を悪化させることがある。]となっている。たしかにNSAIDsの内服により炎症性腸疾患が増悪したのではないかとする報告がありますが、その因果関係は現在のところ不明です。関節症状に対してNSAIDsはよく使用していますが、我々の施設ではいまのところ増悪した経験はなく、少なくとも感冒時における短期間の使用であれば問題ないと思われます。


COXU阻害薬
□COXU阻害薬は、胃腸障害を軽減するが、腎障害は軽減しない。
心筋梗塞などの血栓症の増加が明らかとなり,2つのCOX‐U阻害薬が市場から撤退した。結局,米国FDAでは2005年に米国で承認されている全てのNSAIDsに心血管系の副作用について警告を付けることを指示した。なお,低用量アスピリンのみは逆に心筋梗塞発症を予防するという明確なエビデンスがある。


ソランタール
□唯一の塩基性NSAIDsであるソランタールは、アスピリン喘息で負荷陽性の報告があったため、平成6年の再評価時に投与禁忌の追加記載がなされた。しかし、多くの喘息専門医において多数使用例に関して発作の悪化は見られず、本症に対し安全であると考えられている。鎮痛作用は弱いので安全性を優先して投与しないか、投与するかは医師の判断になろう。


ポンタール
□唯一の液剤。ちなみにカプセルもある。
□10年位前には未熟児の動脈管開始存症にポンタールシロップが処方されていた。今も処方されているかは不明。
10年ほど前、副作用を治療に応用して「未熟児の動脈管開存症」ポンタールシロップを使用(適応外)していた。今では2005年に#インダシン静注用1mgが発売されている。 
□当院の耳鼻咽喉科では、食“前”にポンタールが処方される。10年以上使用されている。これは嚥下痛を和らげるため。食時の30分前に服用させている。PKから考えれば食事の時間がTmaxになるように、1時間以上前に飲ませたほうがもっとも効果が狙えると考える。



ボルタレン坐薬
□坐剤はボルタレンが95%以上の処方割合を占める。
□ボルタレン坐剤は
注射以外では最も強力な作用をもつ。50mg/個を1日4回使う処方も散見する。天井効果に達していないのか疑問である。しかし、そこそこ処方されている現状から、そこそこ効くのだろう。



ロピオン注
□唯一のNSAIDの注射剤。
□NSAIDではないが、唯一のピリン系薬である「メチロン」がある。解熱作用に優れていると言われて言われ、薬効はかなりシャープ。昔はよく使われていたが、過敏症、重症皮膚障害、血液障害、筋注による筋拘縮などが問題になり使用頻度が減ってきている。メチロンは皮下注あるいは筋注が原則。



(その他)
■NSAIDによる消化性潰瘍の予防

PPI 適応を取得している!
・・・低用量アスピリン投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制、非ステロイド性抗炎症薬投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制
サイトテック錠(ミソプロストール) 唯一NSAID潰瘍に対する適応を持つ。
適応は「非ステロイド性消炎鎮痛剤の“長期投与時にみられる”胃潰瘍及び十二指腸潰瘍」だから、短期使用は適応外かもしれない。
投与初期には下痢や腹部痛が多い
常用量は1日800μg(1回200μg、1日4回)であるが、1日400〜600μgの低用量でも消化性潰瘍予防効果が認められていることから、下痢などの副作用が発現した場合は投与量の減量を検討するとよい。

流産の危険があるため、妊婦や妊娠の可能性のある婦人は禁忌(
   
2ブロッカー 倍量投与で効果ありとの文献報告あり。ほとんど通常量で処方される。保険適応外
胃粘膜防御因子増強薬 副作用が少なく安全性が高いため、汎用される(セルベックス、ムコスタなど)
予防効果を推奨できるだけのデータはない。



作成日 2009年9月19日
更新日 2011年7月15日

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