B型肝炎治療における核酸アナログ製剤の使い分け

本邦には、B型肝炎ウイルス(HBV)のキャリアが約150万人、全人口の約1.2%存在する。慢性肝炎、肝硬変、肝癌の原因としては、C型肝炎ウイルス感染に次いで2番目に多く、肝疾患関連死の約15%を占める。

現在、臨床の場で使用されているB型肝炎治療に対する核酸アナログ製剤は3つである。

製品名
(成分名)
ゼフィックス錠100
(ラミブジン)
ヘプセラ錠10
(アデホビル)
バラクルード錠0.5mg
(エンテカビル)
発売開始年
2009年薬価
2000年
922.20
2004年
1252.10
2006年
1032.30
その他 腎排泄型 腎機能障害の副作用があり、腎障害出現時には隔日投与とする。 空腹時(食後2時間以降、かつ次の食事の2時間以上前)


ゼフィックスは長期投与により耐性ウイルスが出現しやすく,現在では耐性誘導の少ないエンテカビルが第一選択薬になっている.ヘプセラはラミブジン耐性ウイルスに対してラミブジンと“併用して”用いられる.

ラミブジン耐性ウイルスに対してヘプセラを単独投与すると、併用した場合に比べ耐性出現率が高いことがわかっており、「併用する」ことに注意が必要である。

2008年、ヘプセラの単独投与が保険適応になったが、特殊な?事情のある症例を除いて、単独使用されるケースは少ないと思われる。ヘプセラ単独で処方された場合、念のため疑義照会で確認したほうがよいだろう。




京府医大誌 118(12),807〜814,2009.より

【まとめ】
ナイーブ症例(B型肝炎の未治療症例):
   →バラクルードが第一選択(突然変異が起こりにくい)
ゼフィックス服用患者のbreack through症例:
   →ゼフィックスとヘプセラの2剤使用



どの核酸アナログ製剤も静菌(ウイルス)的にしか働かず,薬剤の投与を中止すると血中HBV DNAは再上昇し,肝炎の再燃を見ることが多い.このため患者の判断で服薬を中止しないように説明する必要がある。一旦投与を開始すると投与が長期にわたることが多く,若年者や挙児を希望する女性などでは,長期投与や次世代への安全性が完全に確認されているわけではないので,治療開始・適応の判断は慎重に行う必要がある.

HBVキャリアに対し、抗ウイルス剤を併用せずに、ステロイド、免疫抑制剤、抗癌剤を使用することは、医療過誤になる場合もありうる。
★ワンポイント31「免疫抑制・化学療法により発症するB型肝炎対策」参照

作成日2011年6月4日
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