□腎臓が悪くなるとビタミンDを活性化することが出来なくなり、いくらカルシウムを食事で摂ってもうまく吸収されない。すると血液の中のカルシウムが低下し、上皮小体ホルモン(PTH)がたくさん分泌される。PTHは腎臓にはうまく働けないので仕方なく骨を溶かしてカルシウムを維持しようとする。また尿から排泄されるリンが貯まってこれもPTHの分泌を促進させる。この様な状態を腎性副甲状腺機能亢進症と呼び、透析の患者さんの大きな合併症の一つである。
□慢性腎不全の患者に投与される薬剤を整理しておこう。
症状 |
薬剤 |
腎保護 | ACE-I、ARB |
高P血症 |
炭カル、 沈降炭酸カルシウム |
高K血症 |
カリメート、 アーガメイト |
低Ca血症 |
アルファロール、 ワンアルファ |
アシドーシス |
炭酸水素ナトリウム |
貧血 |
エポジン |
・尿毒症症状の改善 |
クレメジン |
●高血圧は腎機能を低下させる。よって、血圧コントロールは腎障害を進展させないために必要。
●ACE-IやARBは腎臓や心臓を保護する作用があることが知られている。糖尿病性腎症に適応を取っている薬剤もある。ACE−Iは,Crが2、3以下であれば腎臓保護を目的に投与するが,それ以上になると逆に悪化させるという注文がややうるさい薬剤。また高K血症をきたすことがある。
●Ca拮抗薬は輸入細動脈を拡張させ、腎血流量を増加させる。腎障害が進行した症例にも使用でき、また肝排泄型なので蓄積の心配がないため高血圧の治療に適している。
●α1ブロッカーは、腎機能の低下をきたさない薬剤で選択肢の一つ。
●βブロッカーは腎血流量を減少させる場合がある。また腎障害が進行した症例では心不全を合併することが多く、このような症例ではβブロッカーの使用を避けるべき。また、βブロッカーにも肝排泄と腎排泄の薬剤があるので、使用する場合は肝排泄型を選択。
●炭酸カルシウムと乳酸カルシウムの比較
|
適応症 |
臨床での使用用途 |
備考 |
乳酸カルシウム |
Ca補給など |
適応症と同じ |
酸の影響は少ない |
炭カル |
胃・十二指腸潰瘍、胃炎、上部消化管機能異常 |
|
・酸性で溶解し、Caと結合できる |
ポイント1 腎機能の低下が推察できる薬剤をチェックする。
□クレメジン、 カリメート、 ジゴシン低用量【0.0625mg〜0.125mg】など
ポイント2 腎機能の低下があれば、減量が必要な薬剤がないかチェックする。
□腎機能を示す検査値Ccrと薬剤の投与量との関係はハッキリしている。内容がシンプルなので理解しやすいにも関わらず、医師からの問い合わせの頻度も高く、薬剤師らしい議論ができるようになる知識である。
□一方、肝機能低下患者に対する用量は様々な要因が関与するため推測する事はできない。
□減量が必要な薬剤の代表例:H2ブロッカー、 ザイロリック、 抗生剤、 ゾビラックス(後発医薬品:ビクロックス) ←1年目の薬剤師でも必ず覚えてください
□Ccrと薬剤の投与量との関係は、添付文書に明記されている薬剤も多いので、薬剤師として守らなければいけない最低ラインのチェックである。
□豆知識
腎臓がかなり悪いときでも使える唯一の利尿剤:ラシックス
ポイント3 薬剤の用法に注意しなければならない薬剤がある。
□必ず理由とともに理解し記憶しておく。食後”以外”の薬剤がポイント。
●食前 アルロイドG
●食直前 グルコバイ、ベイスン、スターシス、グルファスト
(参考)毎食直前とは5分以内 合言葉「お箸をもったら飲みましょう」
●起床時 アクトネル,フォサマック,ベネット,ボナロン
●食間 ブイフェンド、バラクルード
●その他 クレメジン、
●食後 グラケーなど
ポイント4 一つの薬剤が、様々な診療科で様々な疾患に対し使用されることを理解する。
薬剤 |
用途 |
プロサイリン |
・抗血小板薬 |
デパケン |
・てんかん |
リボトリール | ・てんかん ・抗不安薬 ・気分安定薬(躁うつ病) ・振戦(パーキンソン病) |
リザベン |
・抗アレルギー薬 |
トランサミン |
・止血 |
トリプタノール |
・TCA(三環系抗うつ薬) |
まずは30薬剤程度暗記すれば、処方監査に困らない。今日の治療薬をめくろう!
ポイント5 酸分泌抑制薬を併用薬とした時のpH変動によるPK,PDの変動について考える力をつける
□すべての診療科で処方頻度の高い酸分泌抑制薬との併用で相互作用を受ける薬剤をパターン化して整理し、記憶しておこう。
(例)イトリゾール+酸分泌抑制薬、イレッサ+酸分泌抑制薬、酸化Mg+酸分泌抑制薬(溶解できない→浸透圧を上げられない→下剤としての酸化Mgの作用が減弱!なお、腎機能が障害されるとMgが体内に蓄積しやすいため、投与を控える。)
ポイント6 適応外使用について理解しておく。
□プロサイリンは腎血流量を維持し、腎不全の進行度を軽減する。
□プロサイリンは眼科領域では網膜静脈閉塞症に投与される。
作成日 2008年9月28日
実例処方2の解説